アセロラ

acerola
西インドチェリー バルバトスチェリー
Malpighia emarginata 

「ビタミンCの王様」と呼ばれるほど果物の中で圧倒的に多くのビタミンCを含む真っ赤な果実です。アントシアニンをはじめポリフェノールも豊富で、強い抗酸化作用を発揮し、老化・病気の予防や目の健康維持、美肌・美白効果に働きかけます。

アセロラとは?

●基本情報
アセロラはキントラノオ科ヒイラギトラノオ属に属する高さ約3mになる常緑低木植物[※1]、またその果実のことをいいます。西インドチェリーやバルバトスチェリーとも呼ばれています。
アセロラの果実は直径2~3cm、重さ6~10gのデコボコとしたかわいい、さくらんぼのような球形をした赤い実です。花は淡い紅色の5弁花で、果実は熟すにつれて黄色から赤色、濃い紅色へと変化し、りんごに似ている香りも特徴です。熟したアセロラは果汁も多く、口にいれると皮は柔らかく、甘い中にも少し酸っぱい味がします。

●アセロラの歴史
西インド諸島や熱帯アメリカでは、昔から風邪をひくなど身体が弱ったときにアセロラを食べると元気が出るといわれ、健康維持に効果的な食べ物として、親しまれてきました。
アセロラに関心が持たれるようになったきっかけは、1940年代、プエルトリコの科学者がアセロラの果実にアスコルビン酸(ビタミンC)が多く含まれていることを発見したことです。
大航海時代の15世紀、イギリス人やスペイン人によって世界へ広められ、日本へは1958年にハワイ大学教授のヘンリー仲宗根氏によって沖縄に伝えられたことが始まりといわれています。

●アセロラの原産地・生産地
原産地は西インド諸島や熱帯アメリカです。
現在は、ブラジルがアセロラの世界最大の生産地で、亜熱帯気候や熱帯気候、気温でいえば25~32℃ぐらいの温暖な気候の地域で栽培されています。日本では主に沖縄で栽培され、5~11月に旬の時期を迎えます。沖縄の本部町では、アセロラの初収穫の時期である5月12日を「アセロラの日」と制定しています。
また、アセロラを栽培するにあたり、気候とともに大切となってくるものが乾燥です。アセロラは、ある程度の土壌水分さえあればよく育ちます。湿度が高いと病害が起こりやすくなってしまいます。

●アセロラの種類
アセロラは、酸っぱさが強く甘さが少ない「酸味種」と甘さが多く酸っぱさが少ない「甘味種」があります。アセロラの種類によって、ビタミンC量など若干異なりますが、いずれの品種も太陽の恵みを受けて育ちます。
日本で栽培されているアセロラは、園芸業者の間で葉の形から、丸葉系や長葉系と呼ばれて区別されている程度で、厳密な品種名の特定はできていないのが現状です。

・ 酸味種
酸っぱさが強い分、ビタミンCがたっぷり入っており、実つきも良く「バーモンド」「レーボルク」「プエルトリコ」などの品種があります。

・ 甘味種
生食に適しています。
フロリダが原産地で甘くみずみずしい大粒の「フロリダスウィート」、ハワイ・オワフ島が原産地で大きい実をつけ、甘酸っぱさがある「マノアスウィート」、ほか「ルビートロピカル」や「チェリースペイン」、「チェリータイ」などの品種があります。

●アセロラの特徴
アセロラの実はとてもデリケートで、樹上熟成するとすぐに傷みはじめてしまうので、産地でなければなかなか生果を見ることはできません。摘み取ってすぐにジュース加工され、ジャムやジュース、ゼリーとして食べられることが多いです。

花も実もかわいらしいことから観賞性が高く、海外ではアセロラの盆栽も流行しています。
アセロラは開花から20~30日で実るため、5月から11月頃まで開花結実を繰り返し、年5回収穫が可能です。春から秋の間に枝の先を切り、風通しをよくすることで、開花を促進するといわれています。また、開花時にホルモン処理をすることが着果率の向上につながるともいわれています。

●生活の中で取り入れるポイント
アセロラに豊富に含まれるビタミンCやポリフェノールは、水溶性であるため一度にたくさん摂っても一定量吸収されると、それ以外は体から排出されてしまします。
体内でもつくり出すことができないため、毎日数回に分けて必要な量をこまめに摂ることが最適です。また、ストレスや喫煙、紫外線など私たちの生活の様々な場面で消費されてしまうビタミンCを毎日摂り続けることが重要です。

成人のビタミンCの1日当たりの摂取量として、100mgの摂取が推奨されています。

ビタミンCは空腹時より満腹時に摂った方が体内への吸収が1.6倍良くなるというデータがあるので、食事の直後に摂るのがより効率的な摂取方法といえるでしょう。【8】

●新鮮なアセロラの見分け方と保存方法
皮の色がきれいな赤色で、果実にハリがあり、傷がないものを選ぶことが大切です。

生のアセロラはとても傷みやすく、冷蔵で保存する場合2~3日で傷み始めてしまいます。冷凍で保存すると傷みにくくなり、栄養分も比較的保たれます。

●アセロラに含まれる成分
アセロラは「ビタミンCの王様」
アセロラの持つビタミンC量は驚くほど豊富で、アセロラ100g中に1700mgも含まれています。その量は、100g中に50mgのビタミンCを含むレモンの約34倍にも匹敵し、成人の1日に必要なビタミンC量をアセロラ果汁10%の飲料100ccで取れてしまうほどです。
それ程までにアセロラにビタミンCが多く含まれる理由の1つとして、アセロラ自身が強い紫外線から自分の身(実)を守るために、自らビタミンCをつくり出すということが挙げられます。
他の同量の果実と比較してもビタミンCの含有量は圧倒的に多く、身体にとって重要なミネラルの含有量も優れています。ナトリウムを体外へ排出する働きを持つカリウムの含有量も比較的多いため、高血圧などの予防にも効果的です。
また、アセロラは脂質をほとんど含みませんが、脂溶性のβ‐カロテンビタミンEが多めであるという珍しい果実でもあります。
アセロラはポリフェノールの一種である「アントシアニン」や「ケルセチン」も含んでおり、体内のサビつきの原因となる活性酸素[※2]の働きを抑え酸化を防ぎ、老化や病気の予防効果があります。
例えば、りんごを切ってそのままにしておくとりんごの色は茶色くなってしまいます。それが酸化です。酸化は体内でもおこり、病気や肌トラブルの原因にもなってしまうのです。酸化から体を守り、ポリフェノール(アントシアニン)とビタミンCがお互いに助け合って相乗効果となり生まれる強い抗酸化作用は、老化や病気の予防効果から美肌効果までと様々です。
さらには「造血のビタミン」ともよばれ、血液を造ることに欠かせない葉酸も比較的多く含んでいます。
エネルギー(カロリー)は、水分が多いため野菜と同じくらい低いです。

[※1:常緑低木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、生長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

アセロラの効果

アセロラには、強い抗酸化力を持つビタミンCやポリフェノールの一種であるアントシアニン・ケルセチンなどを豊富に含んでおり、以下のような健康に対する働きや効果が期待できます。

●美肌・美白効果
アセロラに豊富に含まれるビタミンCやアントシアニンは、シミ・そばかすを防ぎ、ハリのある肌をつくる働きがあります。
メラニンの生成を抑える働きがあると最近注目されているのが、ポリフェノールの一種であるアントシアニンの抗酸化力です。シミ・そばかすの原因となるメラニンは、チロシンというアミノ酸の一種からできています。メラニンをつくる酵素であるチロシナーゼの活性をアントシアニンが抑えることで、メラニンの生成が抑制されるのです。
つまり、以前から美肌に高い働きがあるといわれていたビタミンCと最近注目のポリフェノール、どちらも含まれるアセロラはまさに「美肌フルーツ」としての可能性を秘めているといえます。
また、肌や筋肉、骨に欠かせない細胞結合組織であるコラーゲンの生成を促進します。 【1】

●ストレスをやわらげる効果
アセロラに含まれるビタミンのひとつであるビタミンCは、ドーパミンやアドレナリンなどの神経伝達物質の合成、ストレスを緩和するホルモンである副腎皮質ホルモンの生成に働きかけ、精神的な抵抗力をアップさせます。

●貧血を予防する効果
ビタミンCは、食べ物に含まれる非ヘム[※3]が体内に吸収される際、体に吸収されやすい鉄に変える働きがあります。
さらに、アセロラはビタミンCだけではなく、ミネラルも多く含んでいるため、貧血改善に効果を発揮するといわれています。

●生活習慣病を予防する効果
生活習慣病は、食生活の欧米化や運動、休養などの生活習慣の変化によって近年患者数が増加しています。
マウスを使った研究で、糖尿病のマウスから生まれた子マウスにアセロラジュースを飲ませたところ、アセロラジュースを飲んだマウスではコレステロール値や中性脂肪、血糖値の減少がみられ、善玉コレステロールも増加していました。
アセロラは、糖尿病や脂質異常といった生活習慣病の症状の予防に役立つことが期待されています。 【5】

●感染症を予防する効果
アセロラに多く含まれるビタミンCは、免疫力を高め、風邪などの感染症を予防し、回復を早めることで知られています。
ビタミンCは、体内に侵入した異物(細菌やウイルスなど)を撃退する働きをもつ血液中の白血球、特に好中球に大量に含まれています。感染症にかかると、この白血球の中のビタミンCが使われ減ってしまうことから、白血球の機能を高める作用が、ビタミンCにはあると考えられています。

●炎症を抑制する効果
アセロラに含まれるケルセチンには抗炎症作用があります。関節炎などの炎症は活性酸素が一因とされていますが、ケルセチンはその活性酸素を除去することによって、炎症を抑制する効果があります。

●その他の働き・効果
アセロラには、目の健康に役立つアントシアニンが含まれているため、視力を保つ効果もあるといわれています。

[※3:非ヘム鉄とは、野菜や穀類などに含まれる吸収性の低い鉄のことです。日本人の現状は、食事から摂取する鉄の85%以上が非ヘム鉄だといわれています。]

アセロラは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○肌荒れでお悩みの方
○ストレスをやわらげたい方
○生活習慣病を予防したい方
○免疫力を向上させたい方
○風邪をひきやすい方

アセロラの研究情報

【1】50人の女性(35~60歳)に対するリコピン、アセロラエキス、ブドウ種子エキスのヒト皮膚老化に対する作用を調べた結果、顔・腕のコラーゲンおよびエラスチン線維の増加、pHの低下などが見られました。このことからリコピン、アセロラエキス、ブドウ種子エキスなどの栄養補助食品の利用は、光による皮膚老化を抑えると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22481651

【2】50mgアスコルビン酸を含んでいるアセロラ(Malpighia emarginata DC.)ジュースを摂取させた被験者の血漿中のアスコルビン酸を計測した結果、同量のアスコルビン酸のみを摂取した被験者よりも高いことが分かりました。また尿から排泄されたアスコルビン酸濃度は逆に低いことが分かりました。このことから、アセロラには、アスコルビン酸の吸収を良くしている成分がある可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22040889

【3】マウス血球を使用し、成熟の2つの段階でのアセロラ果実の遺伝毒性および抗遺伝毒性の作用を検討しました。成熟期アセロラエキスのDNA損傷(コメット法)および細胞毒性(MTT法)について検討した結果、いかなる毒性も示しませんでした。また、アセロラは、酸化ストレスに対して保護作用があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21503669

【4】ポリフェノール、カロテノイド、マンゴーおよびアセロラを用いて生物分解できるパルプへの実現の可能性を探索したところ、フィルムの形成が可能でした。これはアセロラの果肉におけるビタミンCの多量の存在が、酸化促進剤として働いたためと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21361289

【5】母体糖尿病のマウスの子に対してアセロラジュース飲用の作用について検討しました。その結果、母体糖尿病のマウスの子のコレステロール、トリグリセリド、グルコースの減少およびHDL-コレステロールの増加が認められました。これらの結果から、アセロラジュースの飲用は糖尿病や脂質異常、またはそれらの合併症に役立つ可能性があることが分かりました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3034956/

【6】アセロラ(Malpighia glabra)はビタミンCが豊富な果物です。アセロラのアスコルビン酸の代謝を調節する分子メカニズムについて検討しました。モノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼは完熟したアセロラからしか検出されませんでしたが、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼは成熟前のものから多く発現されていたことが分かりました。また、周囲が暗い環境下では、アスコルビン酸の含有量が低下することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20933298

【7】ビタミンCは空腹時より満腹時にとったほうが吸収が1.6倍良くなることがわかりました。このことから、朝昼晩の食事の直後にビタミンCを摂るのがよいと考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7253837

もっと見る 閉じる

参考文献

・Costa A, Lindmark L, Arruda LH, Assumpcao EC, Ota FS, Pereira Mde O, Langen SS. (2012) “Clinical, biometric and ultrasound assessment of the effects of daily use of a nutraceutical composed of lycopene, acerola extract, grape seed extract and Biomarine Complex in photoaged human skin.” An Bras Dermatol.2012 Jan-Feb;87(1):52-61.

・Uchida E, Kondo Y, Amano A, Aizawa S, Hanamura T, Aoki H, Nagamine K, Koizumi T, Maruyama N, Ishigami A. (2011) “Absorption and excretion of ascorbic acid alone and in acerola (Malpighia emarginata) juice:comparison in healthy Japanese subjects.” Biol Pharm Bull.2011;34(11):1744-7.

・Davis CC, Anderson WR. (2010) “A complete generic phylogeny of Malpighiaceae inferred from nucleotide sequence data and morphology.” Am J Bot. 2010 Dec;97(12):2031-48.

・Nunes Rda S, Kahl VF, Sarmento Mda S, Richter MF, Costa-Lotufo LV, Rodrigues FA, Abin-Carriquiry JA, Martinez MM, Ferronatto S, Ferraz Ade B, da Silva J. (2011) “Antigenotoxicity and antioxidant activity of Acerola fruit (Malpighia glabra L.) at two stages of ripeness.” Plant Foods Hum Nutr.2011Jun;66(2):129-35.

・Souza CO, Silva LT, Silva JR, Lopez JA, Veiga-Santos P, Druzian JI. (2011) “Mango and acerola pulps as antioxidant additives in cassava starch bio-based film.” J Agric Food Chem. 2011 Mar 23;59(6):2248-54.Epub 2011 Mar 1.

・Barbalho SM, Damasceno DC, Spada AP, Palhares M, Martuchi KA, Oshiiwa M, Sazaki V, da Silva VS. (2011) “Evaluation of glycemic and lipid profile of offspring of diabetic Wistar rats treated with Malpighia emarginata juice.” Exp Diabetes Res.2011;2011:173647.Epub 2011 Jan 23.

・Eltelib HA, Badejo AA, Fujikawa Y, Esaka M. (2011) “Gene expression of monodehydroascorbate reductase and dehydroascorbate reductase during fruit ripening and in response to environmental stresses in acerola (Malpighia glabra).” J Plant Physiol.2011 Apr 15;168(6):619-27.Epub 2010 Oct 8.

・Yung S, Mayersohn M, Robinson JB. (1981) “Ascorbic acid absorption in man: influence of divided dose and food.” Life Sci. 1981 Jun 1;28(22):2505-11.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ