アロエベラ葉エキス

Aloe barbadensis leaf extract

アロエベラの葉から抽出されたアロエベラ葉エキスには、200種類以上の有効成分が含まれています。肌の潤いを保つ働きや肌を引き締めるなどの効果があることがわかっており、最近では化粧品などにも使われるようになりました。また、サプリメントなどの健康食品にも配合され、胃腸の調子を整える効果や美肌を導く効果があると期待されています。

アロエベラ葉エキスとは?

●基本情報
アロエベラとは、ユリ科アロエ属の常緑多肉多年草[※1]で、300種類以上存在するアロエの品種のひとつです。アロエベラの葉は、長さ70~80cm、幅10cm、厚さ3cm程に生長し、12~16枚集まってひとつの株をつくっています。大きな葉であれば、1枚で1.5kg前後にもなります。アロエベラは、葉が折り重なるように地面近くから葉が出ているため、 横から見ると逆円錐状に広がっているように見えます。

アロエベラの原産地はアフリカやアラビア、地中海地方です。
アロエベラという名前は、植物学者であるリンネ氏によって200年以上前に命名されました。アロエベラのベラとはラテン語で「真実」を指すことから、アロエベラは「真実のアロエ」という意味を持ちます。

またアロエベラの学名である「アロエ・バルバデンシス・ミラー」はミラー氏によって命名されたバルバドス島(西インド諸島)に自生するアロエという意味を持ちます。

アロエベラはアメリカやメキシコで多く栽培され、海外ではアロエというとアロエベラを意味します。葉のゼリー質の部分が多く、ヨーグルトやドリンク剤などの健康食品に多く利用されています。アロエベラの葉から抽出されたアロエベラ葉エキスには、肌の潤いを保つ働きや肌を引き締める働きがあると分かっていることから、最近では化粧品などにも使われています。

●アロエベラ葉エキスの歴史
アロエベラの歴史は古く、今から4000年程前にはすでに生薬として使われていたと考えられています。紀元前1550年頃のエジプトのミイラの足元から発見されたパピルス[※2]にも「数百年前からアロエが使われている」といった記述が見られます。
紀元前4世紀、ギリシャやペルシャなどに遠征してマケドニア帝国をつくったアレキサンダー大王は、アリストテレスの進言により、遠征前にソコトラ島で熱心にアロエベラを栽培させました。その理由は、兵士たちの健康のためだったといわれています。広大なマケドニア帝国ができた背景にはアロエベラ効果があったといわれており、当時からアロエベラには健康効果があると考えられていました。

また、世界三大美女のひとりであるクレオパトラの美貌はアロエベラでつくられたともいわれています。クレオパトラは、アロエベラの樹液をベースにしたジェルや化粧水をつくって肌に潤いを与え、エジプトの強い日差しから美しい肌を守っていたそうです。

現在では、世界中の研究所や製薬会社などでアロエベラの薬効成分が研究され、国際アロエ科学評議会(IASC)にて様々な成果が報告されています。
これまで、アロエベラの免疫強化や血糖値の調節などの研究成果が発表されています。

●アロエベラ葉エキスに含まれる成分と性質
アロエベラには約200種類もの有効成分が含まれています。原産地である砂漠の厳しい環境でも生き抜くことができるよう、多くの栄養成分がその葉に蓄えられたためであると考えられています。

アロエベラの葉の主成分のひとつは、ゼリー質に含まれる多糖体です。多糖体とは、たくさんの糖が繋がり、様々な働きを持つ成分のことです。
アロエベラ葉エキスには他にも、健胃作用を持つアロエモジン、殺菌作用を持つアロエチン、緩下作用[※5]を持つアロイン、抗腫瘍性の働きを持つアロミチンやアロエウルシンなどが含まれています。また、ビタミンAビタミンB1ビタミンB2ビタミンB6ビタミンB12ビタミンCビタミンEといったビタミン類カリウム分などのミネラル類など多くの成分も含まれています。

[※1:常緑多肉多年草とは、1年を通して枯れることなく緑色で、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、毎年茎や葉を伸ばす植物のことです。葉、茎または根の内部の柔組織(じゅうそしき)に水を貯蔵している植物は多肉といわれます。]
[※2:パピルスとは、古代エジプトでカミガヤツリという植物の茎の繊維でつくった紙の一種です。書写材料として、紀元前2000年頃から紀元後数世紀に使用されました。]

アロエベラ葉エキスの効果

アロエベラ葉エキスには、美白効果のあるアロエシンや腸の調子を整えるアロエニン、胃の調子を整えるアロインとアロエモジンなどが含まれ、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●美肌効果
アロエベラ葉エキスには肌の調子を整える様々な働きがあります。そのひとつが、肌の生まれ変わりの周期を整える働きです。肌は、表面に近いところから表皮・真皮・皮下脂肪組織という3つの組織に分けられます。この表皮で起こる細胞の生まれ変わりのことを、ターンオーバーといいます。
表皮で生まれた細胞が表面に押し上げられ、最後に垢となって剥がれ落ちるまでの期間が約28日間であることが理想的なターンオーバーの周期だといわれています。しかし、紫外線や加齢などで肌の水分を保つ力が低下すると、表皮にある古い角質が固くなり、剥がれ落ちなくなります。アロエベラ葉エキスには、ターンオーバーを整え、理想的な周期に近づける働きがあるといわれています。

肌の弾力と潤いを生み出しているのは、動物性たんぱく質のコラーゲンです。コラーゲンは真皮に存在し、肌を内側から支えることでハリや弾力をもたらします。
ヒトの体の中では古くなった硬いコラーゲンが分解され、やわらかくて新しいコラーゲンが日々つくられます。しかし、加齢とともにつくられるコラーゲンの量は減少し、肌からハリや弾力、潤いが失われてしまいます。
アロエベラ葉エキスを肌に塗ると、肌のコラーゲン量が増えたという研究結果があります。さらに、食用として摂取しても効果が得られるということが確認されたため、美肌にはアロエベラ葉エキスを内と外の両方から摂取することがより効果的だといわれています。

また、アロエベラ葉エキスには、ニキビを改善する効果があります。
カリフォルニア州・アクネ研究所で、重症のニキビ患者18名を対象に一定の治療を行った後、顔にアロエベラのゲルを塗り経過を観察する実験が行われました。1日後、アロエベラ葉エキスを塗った部分で血管が収縮し、むくみが改善されました。3~4日後、ニキビから染み出してくる液が少なくなり、外膜が張られることが認められました。5~6日後には肌の再生が終わり、わずかな期間で重症なニキビが完治したといわれています。この報告はアロエベラ葉エキスを塗った時の効果でしたが、口から摂ったときの作用も変わりません。原因が細菌性・便秘性のニキビでも、同じような効果があると考えられています。
また、アロエベラ葉エキスには皮膚を修復する働きがあり、細菌性・便秘性や年齢に関わらず、陥没したニキビ跡に非常に有効だといわれています。

●美白効果
アロエベラ葉エキスにはシミやそばかすを薄くし、肌に透明感を与える美白効果があります。
マウスに紫外線を当ててからシミをつくる薬剤を塗った後、アロエベラ葉エキスを塗ったマウスと塗らないマウスを比較すると、塗ったマウスには紫外線の作用を防止する働きが認められました。
また、アロエベラ葉エキスに含まれるアロエシンという成分にはビタミンCと同じぐらいの美白効果があり、メラニン色素をつくるチロシナーゼの働きを抑えるといわれています。また、シミ・そばかすを予防するだけではなく、細胞の生まれ変わりを促進し、メラニン色素を肌の外へと追い出すことから、既にできてしまったシミ・そばかすを消す効果も期待できます。【5】

●火傷などの傷を治癒する効果
アロエベラの葉内部の半透明な葉肉部分には、日焼けなどの軽度の火傷に伴う痛みを緩和し、傷の治癒を促進する働きがあります。葉肉部分を患部に直接あてるようにして使用することで、応急処置ができ、きれいに治るため、アメリカの家庭では常備薬として植えられています。
火傷やケガをすると、皮膚に炎症が起きますが、それをアロエベラに含まれるサルチル酸や糖タンパク(ベレクチン)が抑えます。次にビタミンCや多糖体などが皮膚の細胞を活性化し、免疫を調整する成分が皮膚の修復と再生に働きかけます。このように、様々な成分が一緒に働くことで炎症がおさまり、もとの正常な皮膚の状態に戻ります。【1】【2】【3】【6】

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○ニキビでお悩みの方
○シミ、そばかすが気になる方
○火傷や傷のダメージを抑えたい方

アロエベラ葉エキスの研究情報

【1】近年、アロエが化粧品・医薬品および食品産業で利用されています。また、漢方ではしばしば真菌症の治療にも使用されています。最近、アロエを使った臨床試験が実行され、その結果アロエが皮膚保護、創傷治癒、便秘、糖尿病、胃腸障害に有効であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22593933

【2】外科的に傷つけたラット(12周齢)を用いて、アロエベラ、甲状腺ホルモン、およびスルファジアジン銀の創傷治癒の作用について検討しました。その結果、他の薬物塗布群と比較し、アロエベラ塗布群では、有意に創傷治癒能力が高いことがわかりました。このことから、アロエベラの塗布が創傷治癒に役立つと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22474470

【3】アロエの消炎作用のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP:炎症マーカーのひとつ)阻害について検討しました。その結果、アロエ抽出物を加えた末梢血単核細胞(PBMC)では、MMPの産生を濃度依存的に抑制することがわかりました。このことから、アロエは消炎作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22446321

【4】アロエは皮膚状態を保護する機能を有していることが分かっています。そのため各種アロエの抽出物が化粧品にも含まれています。アロエベラエキスのアントラキノンレベル濃度が50ppmを超すと皮膚炎を起こすことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17613130

【5】チロシナーゼの過活性はメラニンを過剰産生し、化学放射線障害のような皮膚障害、すなわち黒色腫につながります。いくつかのアロエ(Aloe ferox, Aloe aculeata, Aloe pretoriensis, Aloe sessiliflora)のエタノール抽出物(500μg/ml)は、チロシナーゼの活性をそれぞれ(60%, 31%, 17%, 13%)抑制しました。このことから、アロエの各種抽出物は皮膚の異常なメラニン産生を抑える働きがあると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22611429

【6】おむつ性炎症を伴った乳児66名に対し、アロエのクリーム(32例)またはカレンデュラクリーム(34例)(薬用クリーム)の作用について検討しました。乳児には一日3回、10日間にわたってこれらの薬を塗布しました。その結果、アロエ抽出物塗布はカレンデュラクリーム塗布に比べ、おむつ性皮膚炎の発疹部位が小さくなっていることがわかりました。このことから、アロエ抽出物が皮膚炎に対して有効であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22606064

【7】アロエ製粉が創傷治癒に役立つかどうか、また、抗菌作用があるかどうかについて、ラットおよびウサギを用いて検討しました。結果としてアロエ抽出物は、皮膚上の治癒および細菌の選択増殖抑制活性を示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18773950

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参考文献

・本多京子 監修 食の医学館 小学館

・日本サプリメント協会 著 サプリメント健康バイブル 小学館

・吉川敏一 辻智子 著 医療従事者のための機能性食品ガイド 講談社

・八木 晟 著 ドクター八木の世界一わかりやすいアロエベラの本 現代書林

・田中平三.門脇考.篠塚和正.清水俊雄.山田和彦. 監修 健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース- 同文書院

・薬用ハーブの機能研究 健康産業新聞社

・蒲原聖可 著 サプリメント事典 平凡社

・Foster M, Hunter D, Samman S. (2011) “Evaluation of the Nutritional and Metabolic Effects of Aloe vera.” Herbal Medicine: Biomolecular and Clinical Aspects. 2nd edition. Boca Raton (FL): CRC Press; 2011. Chapter 3.

・Tarameshloo M, Norouzian M, Zarein-Dolab S, Dadpay M, Gazor R. (2012) “A comparative study of the effects of topical application of Aloe vera, thyroid hormone and silver sulfadiazine on skin wounds in Wistar rats.” Lab Anim Res. 2012 Mar;28(1):17-21.

・Inpanya P, Faikrua A, Ounaroon A, Sittichokechaiwut A, Viyoch J. (2012) “Effects of the blended fibroin/aloe gel film on wound healing in streptozotocin-induced diabetic rats.” Biomed Mater. 2012 Jun;7(3):035008.

・Vijayalakshmi D, Dhandapani R, Jayaveni S, Jithendra PS, Rose C, Mandal AB. 2012 “In vitro anti inflammatory activity of Aloe vera by down regulation of MMP-9 in peripheral blood mononuclear cells.” J Ethnopharmacol. 2012 May 7;141(1):542-6.

・Cosmetic Ingredient Review Expert Panel. (2007) “Final report on the safety assessment of AloeAndongensis Extract, Aloe Andongensis Leaf Juice,aloe Arborescens Leaf Extract, Aloe Arborescens Leaf Juice, Aloe Arborescens Leaf Protoplasts, Aloe Barbadensis Flower Extract, Aloe Barbadensis Leaf, Aloe Barbadensis Leaf Extract, Aloe Barbadensis Leaf Juice,aloe Barbadensis Leaf Polysaccharides, Aloe Barbadensis Leaf Water, Aloe Ferox Leaf Extract, Aloe Ferox Leaf Juice, and Aloe Ferox Leaf Juice Extract.” Int J Toxicol. 2007;26 Suppl 2:1-50.

・Mapunya MB, Nikolova RV, Lall N. 2012 “Melanogenesis and antityrosinase activity of selected South african plants.” SEvid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:374017.

・Panahi Y, Sharif MR, Sharif A, Beiraghdar F, Zahiri Z, Amirchoopani G, Marzony ET, Sahebkar A. (2012) “A randomized comparative trial on the therapeutic efficacy of topical aloe vera and Calendula officinalis on diaper dermatitis in children.” ScientificWorldJournal. 2012;2012:810234. Epub 2012 Apr 19.

・Jia Y, Zhao G, Jia J. (2008) “Preliminary evaluation: the effects of Aloe ferox Miller and Aloe arborescens Miller on wound healing.” J Ethnopharmacol. 2008 Nov 20;120(2):181-9.

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