バジル

basil
目帚 メボウキ
Ocimum basilicum

バジルはインド原産のシソ科の一年草で、暖かい場所を好み、日本の夏の時期に育てやすいハーブです。バジルはイタリア料理、特にトマト料理と相性が良く、肉料理やパスタ、サラダ、スープなどに使われ、胃腸の機能を整える効果やリラックス効果を有します。

バジルとは

●基本情報
バジルはインド・アフリカ原産のシソ科の一年草[※1]で、暖かい場所を好み、日本の夏の時期に育てやすいハーブです。バジルは熱帯アジア、アフリカなどの広い範囲で分布し、寒さに弱く、湿り気と有機質に富む土を好みます。バジルは春に種を撒くと夏ごろから花を咲かせます。
種は摂氏20℃以上の環境でないと発芽せず、また日光にさらさないと発芽しないため、土をかけずに栽培します。苗が一定のところまで育ったところで芽の先摘み、脇芽が増え、収穫が増加するといわれています。月に1度は追肥を行い、成長が途切れないようにする必要があります。
バジルのフチにはギザギザがあり、葉の表面を軽く揉むことで香りがたちます。バジルは夏に茎の先端から花穂を伸ばし、白や紅色をした小さな花を穂状に咲かせます。ヨーロッパでは古くから生活に根付いており、特にイタリアでは「バジリコ」と呼ばれ、トマトとの相性が良くピザやソーセージ、パスタやドレッシングなど様々な料理に使われます。
また、イタリアでは求婚のシンボルとして葉を髪に挿してプロポーズする習慣があります。フランスやイタリアでは窓際にバジルの鉢植えを置いて虫除けとしても利用しています。

●バジルの歴史
バジルの原産国はインドで、もとはヒンドゥー教のクリシュナ神にささげる高貴な植物といわれ、人々の幸福を願い、家や寺院の周辺に植えられてきました。4000年前にはエジプトに伝わり、そこからローマや南部ヨーロッパに伝わりました。
バジルの語源はギリシャ語で「王」を意味する「Basileus」から派生したといわれています。紀元1世紀ごろ、ギリシャの医者で薬草学者であるディオスコリデスは、バジルをワインと一緒に適量食べると視力に良いとすすめていました。
16世紀ごろにインドからヨーロッパを経て江戸時代に日本に伝わりました。バジルの和名は「メボウキ」といい、この言葉は江戸時代に、水に浸しておくと表面がゼリー状に変化するバジルの種を用い、目に入った異物を取り除いていた習慣があったことからこの名で呼ばれていたといわれています。

●バジルの特徴
バジルは150種類以上もの品種がありますが、一般に料理などで使用されているものは「スイートバジル」です。バジルは主に食用として利用されていて、殺菌効果や消化を促進する効果や胃炎などの胃腸の諸症状を改善するともいわれています。バジルはイタリア料理、特にトマト料理と相性が良く、肉料理やパスタ、サラダ、スープなどに使われます。
また、バジルの香りは、香り立ちのスピードが速く、すぐになくなってしまうため、料理の仕上げに用います。バジルの葉の香りは金気を用いると、消え去ってしまうため、細かくして用いる場合には包丁よりも手でちぎった方が良いといわれています。

●バジルの種類
代表的なバジルを紹介します。

・スイートバジル
バジルの代表種で、やわらかでつやのある葉を持ちます。イタリア料理に欠かせない存在です。

・ブッシュバジル
スイートバジルの変種で、葉が小さいことが特徴です。ハーブティーやスパイスに利用します。

・ホーリーバジル
インド原産で、お香の香りがします。タイ料理では炒めものに良く使われます。

・レモンバジル
小さめの葉からレモンの香りがする品種です。料理やハーブティーに向いている品種です。

・パープルラッフルバジル
赤紫色でつやのある葉が特徴です。ビネガーなどに漬け込まれて利用されることが多いです。

●バジルに含まれる成分と性質
バジルは高貴でさわやかな香味を生み出す香り成分と苦みを生み出す成分が含まれています。
香り成分では、消化機能の促進や女性ホルモン様作用を持つアネトールや、抗菌作用を持つシネロールが含まれます。ユリの花のような甘い香気を持つリナロールにはリラックス効果や食欲増進効果があります。
他にも、苦味を持つサポニンを含んでいます。サポニンは抗酸化作用[※2]をもち、老化予防や血圧やコレステロール値を下げる効果があります。

[※1:一年草とは、種をまいてから一年以内に発芽・生長・開花・結実・枯死する草のことです。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

バジルの健康効果

●胃腸の機能を高める効果
バジルは胃腸の機能を整える効果があるといわれています。
バジルの香りは食欲を促進し、さらに吐き気を鎮め、胃を健康に維持する効果があり、消化不良や食欲不振、また腹部の膨満感にも働きかけます。

●リラックス効果
バジルの香りは、心のバランスを整え、イライラや不安、憂鬱感に働きかけるといわれています。バジルの香りは神経のバランスを整え、ストレスや不安などの神経の疲労に活力を与えて、心の不調を取り除くといわれています。また、集中力を高めたいという時や脳が疲れた時には、芳香浴[※3]として使うこともできます。
心配事があって夜中に目が覚めるような時は、バジルを入浴剤にすることもできます。

[※3:芳香浴とは、精油を香らせて、身体に取り入れることです。]

バジルは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○胃腸の機能を高めたい方
○リラックスしたい方
○ストレスをやわらげたい方

バジルの研究情報

【1】32種類のハーブの水抽出物についてO2(-)の消去活性を調べました。活性はHPX-XOD反応により発生させたのでO2(-)をESRを用い測定した結果、クローブ、オールスパイスおよびバジルが0.25mg/mLの濃度で50%以上のO2(-)消去活性を示しました。さらに、Linewever-Burk plotによるKm値を比べた結果、クローブとバジルは抗酸化酵素SOD様作用を持ち、抗酸化力に優れています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/130000671182

【2】バジル,ゲラニウム,ジャスミン,ペパーミント及びローズウッドには、アラキドン酸由来の血小板凝集を抑制したことから、バジルは血流改善効果が期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110000237380

参考文献

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・林真一郎 ハーブと精油の基本辞典 日経印刷株式会社

・佐々木薫 ハーブティー事典 日経印刷株式会社

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・蔵敏則 著 食材図典 小学館

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・武政三男 80のスパイス辞典 フレグランスジャーナル社

・アースプランツリサーチオーガニゼーション HERB BIBLE 双葉社

​・小黒晃 監修 初めてのハーブ作り 世界文化社

​・YUN Young Sook、NAKAJIMA Yuki、ISEDA Etsuko、KUNUGI Akira (2003) “ESRによるハーブの抗酸化作用の測定” 食品衛生学雑誌 44(1), 59-62, 2003-02-25

・茅原 紘、中川 賢司、只左 弘治 [他] (1996) “ハーブ精油の血小板凝集抑制能” 信州大学農学部紀要 33(1/2), 1-8, 1996-12

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