キャットニップ

catnip
キャットミント イヌハッカ チクマハッカ
Nepeta cataria

キャットニップは、シソ科イヌハッカ属の植物でハーブの一種です。西アジアやヨーロッパ原産の多年草で、現在ではヨーロッパ、アジア、中国、朝鮮半島等北半球各地で見られます。このキャットニップはハッカに少し似た味がすると言われており、ハーブティーとしても利用されるほか、サラダや肉料理にも使われます。

キャットニップとは?

●基本情報
キャットニップとはシソ科イヌハッカ属のハーブの一種です。キャットニップは西アジアやヨーロッパが原産で現在では温帯を中心に北半球に多く自生しています。キャットニップは灰色の二年生植物で、樹高は40~100cmになり葉は緩い鋸葉状で薄紫がかった花をつけます。キャットニップは味や香りを楽しむ嗜好品のハーブとは異なり、メディカルハーブと呼ばれる病気の予防や抑制、健康増進に影響のあるハーブです。
そのためキャットニップは古代ローマ時代から民間療法薬としても用いられており、発汗作用や鎮痛作用、解熱作用があります。また、アメリカのワシントン州で栽培されており、花のついた先端部を用いて水蒸気蒸留法[※1]によって精油[※2]が採取されます。
キャットニップにはイヌハッカ、キャットミント等、様々な別名があります。キャットミントはその名の通り、葉をこすり合わせてネコに臭いを嗅がせるとマタタビを嗅がせた時のように、頭を振りながら舐めたり体を擦り付けるなど酔っ払ったような行動を取ることから名づけられました。日本では、長野県などで野生化しており、チクマハッカといわれています。これは長野県の筑摩という地名からついた名前だといわれています。

●キャットニップの歴史
キャットニップは、少なくとも約2000年前の古代ローマ時代からハーブティーとして喉の痛みや風邪の予防のために飲まれていたといわれています。
キャットニップが日本に渡来した際に、少し変わったハッカの味がする点と通常のハッカよりも質が劣る点からイヌハッカと呼ばれるようになりました。「イヌ」という接頭語がついた理由は、その昔日本で使われていた「犬侍」や「いぬ桜」という表現に由来します。犬が接頭語としてつくことで本物より質が下がることを意味します。
また、キャットニップは1735年に出版されたケオーの「アイルランドの草木誌」の中にも記述があります。

●食事としてのキャットニップ
キャットニップは古代ローマ時代からハーブティーとして利用されてきました。キャットニップのハーブティーはのどの痛みや風邪の予防に有効で、現在でも消化機能向上、発汗促進、解熱作用、鎮痙作用[※3]があるといわれてハーブティーとしても利用されています。また、インフルエンザや風邪などの発熱性疾患の際に飲むと効果的だといわれています。他にも、キャットニップは食材や調味料としても利用されます。中世頃からヨーロッパではキャットニップの葉が肉への香りづけに使用されたり、新芽がサラダとして使用されています。現在はイタリアでもサラダやスープ、キャセロールという家庭料理に用いられています。

●キャットニップの過剰症
キャットニップは一般的に成人には安全だと考えられていますが、鎮静作用があるため、大量摂取は危険とされています。経口摂取の場合、380mgのカプセル剤を1回2カプセルで1日3回が1日の目安とされています。キャットニップには鎮痛作用のある成分があるため、喫煙者、高齢者、子供、妊娠中及び授乳期、月経の非常に重い人は大量に摂取するのはとても危険なため、摂取は控えた方がいいとされています。頭痛や嘔吐が起こり、気分が悪くなることがあります。

●キャットニップに含まれる成分と性質
キャットニップには以下のような成分が含まれています。
・カルバクロール
オレガノの精油に含まれているモノテルペンの誘導体で、オレガノのもつ特徴的な刺激臭のもととなります。また、抗菌・抗ウイルス作用があるため、風邪などにかかりにくくなります。

・ネペトール
モノテルペンの誘導体で殺菌作用があります。

・ゲラニオール[※4]
ゲラニオールはローズオイルの主成分である香気成分です。ゲラニオールには抗菌、抗不安、皮膚の弾力回復などの働きがあり、リラックス効果や美容やエチケットなど様々な分野で効果を発揮します。

タンニン
ポリフェノールの一種で強い渋みを感じます。動脈硬化や生活習慣病の予防に効果的です。

・ネペタラクトン
テルペン類の一種で、マタタビに含まれるマタタビラクトンと似た構造をしているためネコ科の動物に与えるとマタタビを与えた時のように酔っぱらったような行動をとります。

[※1:水蒸気蒸留法とは、にほとんど溶けない物質に水を加えたり水蒸気を吹きこんだりして、水蒸気とともに物質中の揮発成分を蒸溜する方法です。植物の精油などの分離・精製に用いられます。]
[※2:精油とは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。]
[※3:鎮痙作用とは、痙攣を抑える作用です。一般的には胃などに用いられる鎮痛鎮痙剤を指します。]
[※4:ゲラニオールとは、バラに含まれる香気成分で、抗菌、抗不安、皮膚弾力回復などの作用があります。]

キャットニップの効果

●解熱効果
キャットニップには、解熱作用や発汗作用があります。そのためキャットニップは発熱性疾患の際に摂取すると効果的です。またこのほかにも鎮静作用があるので、ただ熱を下げるだけではなく安眠にもつながります。これらの作用はキャットニップに含まれるネペタラクトンという二環性のテルペノイドに鎮静作用、解熱作用、発汗作用があるためです。【4】
風邪のひきはじめや熱が出た場合にはキャットニップのハーブティーが効果的です。

●精神を安定させる効果
キャットニップには精神を安定させる効果があります。そのため不眠症の方におすすめです。朝や寝る前にハーブティーとして摂取すると快適な睡眠に効果を発揮します。また鎮静効果があるため、落ち着きたい時や緊張している際に飲むと効果的です。【2】【5】

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○風邪をひきやすい方
○体調を整えたい方
○心を落ち着かせたい方

キャットニップの研究情報

【1】X線解析などにより、キャットニップから新規成分であるネペタリアシドが見つかっています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006281249

【2】キャットニップ抽出液をマウスへ飲用させ、オープンフィールド試験においてマウスの行動をみた結果、キャットニップ抽出液飲用マウスにおいては、常道行動が上昇したことが分かりました。このことから、キャットニップは、活動的・常道的にさせる働きがある可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8588288

【3】キャットニップの抗菌性について、黄色ブドウ球菌のいくつかの株(MRSA含む)を用いて調べたところ、コアグラーゼ抑制作用、DNase抑制作用、サーモヌクレアーゼ抑制作用、さらに吸着抑制作用が認められました。このことから、キャットニップは、抗菌作用を有していると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11738350

【4】逆相HPLC分析により、キャットニップからネペタラクトンを見出しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11817179

【5】キャットニップを分析した結果、アロマオイル等に使用されるゲラニオール、シトロネロール、ゲラニルアセテート等、香気成分が多く含まれていることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12797753

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参考文献

・アルバート・Y.リューング 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店

・田部井満男 ハーブ・スパイス館 小学館

・バーバラ サンティッチ、 ジェフ ブライアント編 世界の食用植物文化図鑑 柊風舎

・トム・ストバート 世界のスパイス百科 鎌倉書房

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・村井 不二男、田川 素子、井上 博之、石田 寿昌、井上 正敏 (1987) “A New Iridoid Glucoside, Nepetariaside, from Nepeta cataria(Organic,Chemical)” Chemical & pharmaceutical bulletin 35(6), 2533-2537, 1987-06-25

・Massoco CO, Silva MR, Gorniak SL, Spinosa MS, Bernardi MM. (1995) “Behavioral effects of acute and long-term administration of catnip (Nepeta cataria) in mice.” Vet Hum Toxicol. 1995 Dec;37(6):530-3.

・Nostro A, Cannatelli MA, Crisafi G, Alonzo V. (2001) “The effect of Nepeta cataria extract on adherence and enzyme production of Staphylococcus aureus.”

・Ganzera M, Crockett S, Tellez MR, Khan IA. (2001) “Determination of nepetalactone in Nepeta cataria by reversed phase high performance liquid chromatography.” Pharmazie. 2001 Nov;56(11):896-7.

・Baranauskiene R, Venskutonis RP, Demyttenaere JC. (2003) “Sensory and instrumental evaluation of catnip (Nepeta cataria L.) aroma.” J Agric Food Chem. 2003 Jun 18;51(13):3840-8.

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