クロウベリー

crowberry
ガンコウラン 岩高蘭
Empetrum nigrum

クロウベリーとは、ベリー類の一種で直径1cm程度の黒紫色の果実です。イギリスやフィンランドなど特に寒い地域に自生しており、日本国内でも中部地方以北の高地に自生しており岩高蘭の名で知られています。クロウベリーはジュースやお菓子づくりに利用されており、美肌効果や腸内環境を整える効果が期待されています。

クロウベリーとは?

●基本情報
クロウベリーとは、ガンコウラン科ガンコウラン属の常緑低木植物[※1]で、ベリー類の一種です。クロウベリーは、空気が乾燥した、灌木[※2]の少ないタイガ[※3]や沼地、泥炭地[※4]に自生します。日本国内では、主に中部地方以北の高山に自生しています。このように日本にも自生しているクロウベリーは日本では岩高蘭(ガンコウラン)と呼ばれ、高山植物[※5]として知られています。また、海外ではイギリス北部や北欧のフィンランドに自生しており、フィンランドではジュースやジャム、ゼリー、マーマレードなどのお菓子づくりに利用されています。
フィンランドに自生しているクロウベリーは2種類あります。まず1つ目はフィンランド語では北方クロウベリー(E. Nigrum ssp. hermaphorditum)と呼ばれているクロウベリーです。こちらのクロウベリーの特徴は、サクラやバラ等と同じように雌雄同体[※6]である点です。他にも果実が大ぶりで沢山付き、葉が濃い緑色をしており、葉の裏面にある薄い線のようなくぼみははっきりとしているという特徴があります。一方、フィンランド語で南方クロウベリー(E. Nigrum ssp. nigrum)と呼ばれるクロウベリーは雌雄異株[※7]で雄の株と雌の株が分かれているのが特徴です。その他にも、果実は小ぶりであまり沢山は実らず、葉も黄緑色で、葉の裏にある薄い線はくぼんでいません。
クロウベリーにはとても多くのアントシアニンが含まれており、一部ではビルベリーよりもアントシアニンが多く含まれているという研究もあります。

●クロウベリーの歴史
クロウベリーの植物遺体が北海道にある遺跡から発掘されています。この遺跡は7世紀頃の遺跡と考えられるため、クロウベリーはこのころから北海道に自生していたことが考えられます。

●クロウベリーに含まれる成分と性質
クロウベリーには良質な食物繊維が含まれています。また、青紫色の天然色素であるアントシアニンも豊富に含まれており、一部の研究ではビルベリーよりもアントシアニンの量が多く含まれているという報告もあります。

<豆知識>アイヌ民族からも親しまれたクロウベリー
クロウベリーはアイヌ民族からも親しまれており、食べると病気にかからないと信じられていたため、大量に採取して生で食べていたという記録があります。また食用以外にも果実を染料としても利用していました。

[※1:常緑低木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、生長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:灌木とは、植物学の用語で、成長しても樹高が約3mまでの木のことです。]
[※3:タイガとは、シベリアに発達している針葉樹林のことです。]
[※4:泥炭地とは、湿地に集まった分解のできない植物の堆積物です。]
[※5:高山植物とは、海抜約2500m以上の土地に生える植物のことです。]
[※6:雌雄同体とは、生物として雄の役割と雌の役割が同じ個体に入っていることです。]
[※7:雌雄異株とは、生物として雄の役割と雌の役割が別の個体に分かれている植物のことです。]

クロウベリーの効果

●美肌効果
クロウベリーには、保湿効果があるといわれています。そのため化粧品の保湿・保護成分としてクロウベリーの果実のエキスが利用されることがあります。

●腸内環境を整える効果
クロウベリーには良質な食物繊維が含まれています。食物繊維は腸内細菌のバランスを整え、お腹の調子を整えます。そのため、クロウベリーを摂ることにより腸内環境改善が期待されます。

●細胞(肌や唇)を若々しく保つ効果
クロウベリーには、とても多くのアントシアニンが含まれています。アントシアニンとはポリフェノールの一種で青紫色の天然色素です。クロウベリーに含まれるアントシアニンの量は北欧産野生種ブルーベリーのビルベリーとほぼ同じぐらいと言われています。この豊富に含まれるアントシアニンは強い抗酸化力[※8]を持ちます。そのため、活性酸素や紫外線から守り細胞を若々しく保つ効果や抗癌作用も期待できます。【1】【2】

[※8:抗酸化力とは、たんぱく質脂質DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]

クロウベリーはこんな方におすすめ

○乾燥肌・肌荒れでお悩みの方
○いつまでも若々しくいたい方
○目の健康を維持したい方
○腸内環境を整えたい方

クロウベリーの研究情報

【1】クロウベリーの抽出物にはUVBを阻害し、細胞へダメージ軽減することができます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23476710

【2】活性酸素は細胞にダメージを与えるとされています。クロウベリーの抽出物には抗酸化作用をもち、細胞へのダメージを減らします。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20077224

参考文献

・Kim KC, Kim D, Kim SC, Jung E, Park D, Hyun JW. (1993) “Empetrum nigrum var. japonicum Extract Suppresses Ultraviolet B-Induced Cell Damage via Absorption of Radiation and Inhibition of Oxidative Stress.” Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:983609. doi: 10.1155/2013/983609. Epub 2013 Feb 18.

・Kim KC, Kang KA, Zhang R, Piao MJ, Heo YJ, Chae S, Kim GY, Moon JY, Yoo BS, Hyun JW. (1980) “Risk reduction of ethyl acetate fraction of Empetrum nigrum var. japonicum via antioxidant properties against hydrogen peroxide-induced cell damage..” J Toxicol Environ Health A. 2009;72(21-22):1499-508.

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