ハイビスカス

hibiscus
Hibiscus sabdariffa

ハイビスカスは、主に南国で栽培されているアオイ科の植物で、観賞用、食用、繊維用などで親しまれています。
食用としては主にハーブとして利用されており、ハイビスカスティーにはクエン酸、リンゴ酸、ハイビスカス酸、各種ビタミン類などの多彩な栄養素が含まれています。
主に肌荒れを改善する効果が期待されており、ローズヒップとともに摂取することが効果的です。

ハイビスカスとは?

●基本情報
ハイビスカスとは、アオイ科フヨウ(ハイビスカス)属に属する低木植物の総称で食用、観賞用、繊維用など、あらゆる用途で利用されています。
ハイビスカスは、エジプトの美の女神であるヒビスを由来としており、ヒビスのように美しい花という意味を込めて名付けられたといわれています。
一般的にハイビスカスと呼ばれている南国系の真っ赤な花はハワイアン系とされており、最も代表的な花は日本名でブッソウゲ(仏桑華)といわれ、主に観賞用として親しまれています。
一方、食用のハーブとしてハーブティーやサプリメントなどに用いられているハイビスカスは、ローゼル種という品種であり、花は小さく、淡いピンク色やクリーム色などの様々な色のものが存在します。

●ハイビスカスの生産地
ハイビスカスは雑種植物であるため、明確な原産地は判明していませんが、中国原産のフヨウ科の花木をハワイなどで品種改良されたものであるとの一説もあり、現在はハワイや沖縄などの比較的温暖な地域で栽培されています。
ハイビスカスはその種類によって生産地が異なりますが、南国で育つ花であるにも関わらず、ハワイアン系のハイビスカスは真夏の暑さや冬の寒さに弱い植物です。
よって、ハイビスカスは真夏の頃にはあまり花を咲かせず、秋が近づいて涼しくなってきた頃に花を咲かせる植物です。

●ハイビスカスに含まれる成分と性質
ハイビスカスは、主にハイビスカスティーとして食用ハーブで親しまれています。
ハイビスカスティーの特徴的な味わいである酸味には、クエン酸、リンゴ酸、ハイビスカス酸などの酸味成分が含まれています。
クエン酸には細胞の生まれ変わりを促進させる作用があり、代謝[※1]を向上させる効果があります。
リンゴ酸は、クエン酸よりも甘みを持つ酸味成分で、クエン酸の働きをサポートする役目を担っています。
ハイビスカスに含まれるクエン酸とリンゴ酸の相乗効果によって、新陳代謝[※2]の向上による美肌効果が期待されており、ハイビスカス酸にはそれ以外にも、コレステロール値を低下させる効果があるといわれています。
ハイビスカスには、その他にも各種ビタミン類やミネラル類などの基礎栄養素が豊富に含まれており、代謝の活性化や疲労回復などに効果的です。
また、ハイビスカスに含まれているカリウムには利尿作用があるため、体のむくみや二日酔いに対する効果も示唆されています。
さらに、ハイビスカスにはアントシアニン、ポリフェノール、アミノ酸などの栄養素も含んでいます。
ハイビスカスティーはクレオパトラも愛飲していたという記録が残されており、彼女の美の秘訣が、多彩な栄養素を豊富に含んだハイビスカスティーにあったのではないかという説も唱えられています。

<豆知識>ハイビスカスと相性のいいローズヒップ
ハイビスカスには、肌の生まれ変わりを促進するクエン酸がたっぷり含まれているため、美肌に対する効果が期待されています。
ハイビスカスの美肌効果を促進させるために、ハーブの一種であるローズヒップを一緒に摂ることがより効果的です。
ローズヒップはバラ科バラ属の植物の果実であり、天然ビタミンCの宝庫ともいわれているハーブです。
ローズヒップの外皮には植物の中で最も多くビタミンCが含まれており、肌を美しく保つ働きがあるため、ハイビスカスと一緒に摂ることで、より美肌効果を発揮するといわれています。

[※1:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※2:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることです。]

ハイビスカスの効果

●美肌効果
ハイビスカスを摂取することは、肌荒れの解消に効果的であるといわれています。
ハイビスカスに含まれているクエン酸やリンゴ酸は、美肌を保つために重要な新陳代謝を活性化させる作用があります。
新陳代謝は、古い細胞が新しい細胞に生まれ変わることを指し、肌細胞の生まれ変わりはターンオーバーと呼ばれています。
ターンオーバーの周期は20歳では28日前後であるといわれていますが、30歳代では40日、40歳代では55日、60歳代では90日と年齢を重ねるに従って段々と長くなります。
ターンオーバーの周期が長くなるということは、古い肌が新しい肌へ生まれ変わりにくい状態であるため、肌のシミ、しわ、くすみ、乾燥などの肌荒れが目立つようになると考えられています。
ハイビスカスに含まれているクエン酸は、新陳代謝を促進させるために重要な栄養素であり、糖質、乳酸、体脂肪などをエネルギーに変える大切な働きを担っています。
クエン酸は新陳代謝を活性化させる働きがあるため、肌細胞の生まれ変わりを促進させ、肌荒れに対して効果的であるといえます。
また、ハイビスカスに含まれているリンゴ酸は、クエン酸と同様にクエン酸回路[※3]の一部として機能する栄養素です。クエン酸と一緒に摂ることで、より新陳代謝を活性化し、肌の生まれ変わりに働きかけることができます。
さらに、ハイビスカスには抗酸化作用[※4]を持つポリフェノールも含まれているため、肌の老化を促進する活性酸素[※5]を除去することができます。
ハイビスカスからクエン酸、リンゴ酸、ポリフェノールなどを摂取することで、新陳代謝を活性化させ、肌の生まれ変わりを促進し、肌荒れを解消する効果が期待できるのです。
またハイビスカスには抗炎症作用やしわ抑制効果も報告されており、肌への機能性が注目されています。【1】

●血流を改善する効果
ハイビスカスを摂取することによって、血流を改善する効果が期待されています。
血液は、酸素、栄養素、温度の3つを体内のすみずみに届ける役割を担っています。
血流が悪くなると、酸素や栄養素を細胞のすみずみまで届けることが困難になるため、新陳代謝や体温が低下し、免疫機能が衰えることにつながります。
ハイビスカスに含まれるクエン酸は、脂質の代謝を促進する栄養素なので、血液中の脂質を分解する作用があります。
脂質は体内で酸化すると、血栓[※6]を生成する原因となる悪玉(LDL)コレステロールへと変化するため、ハイビスカスに含まれるクエン酸が脂質の代謝を促すことで、悪玉(LDL)コレステロールを抑制し、血流を改善する効果があると考えられています。【3】【6】

●疲労回復効果
ハイビスカスを摂取することは、疲労の回復に有効です。
激しい運動後などに体内に残る疲労には、乳酸という物質が深く関与しています。
乳酸は、ブドウ糖やグリコーゲンなどをエネルギー源として運動を行った後に体内に蓄積される、いわば燃えカスのような物質であり、蓄積された乳酸はその後、エネルギー源としては利用されることはありません。
ハイビスカスに含まれているクエン酸やリンゴ酸には、疲労物質である乳酸を分解する作用を持つため、ハイビスカスを摂取することにより、運動後の疲労を回復させる効果が期待されています。

●コレステロール値を下げる効果
ハイビスカスには、脂肪の燃焼を促進する効果があります。
ハイビスカスに含まれているクエン酸とリンゴ酸には、代謝を促進させることによって、脂肪の分解を促進することができます。
リンゴ酸は、酢酸やクエン酸からも生成される栄養素ですが、体内で合成されるリンゴ酸は脂肪を合成させる働きを持つため、ハイビスカスなどから摂取することが効果的です。
また、ハイビスカスに含まれているハイビスカス酸は、アミラーゼの活性を阻害することによって、コレステロールを低減させる効果が期待されている栄養素です。
アミラーゼは消化酵素のひとつで、デンプンなどの栄養素を分解して糖質に変える作用を持ちます。
アミラーゼによってつくられる糖質はコレステロールの生成に関与しており、糖質が過剰に吸収されることが、体内におけるコレステロールの生成を増加させる要因のひとつであるといわれています。
ハイビスカスに含まれるハイビスカス酸によってアミラーゼの活性が抑えられると、生成される糖質が減少することで、コレステロールの生産を抑制することができると考えられています。
クエン酸、リンゴ酸、ハイビスカス酸などの相互作用によって、ハイビスカスは脂肪の燃焼を促進する効果が期待されます。【5】

●むくみを予防・改善する効果
ハイビスカスには、むくみを予防・改善する効果が期待されています。
むくみは、体内に余分な水分や老廃物が蓄積されることが原因であり、血流の改善や、適度な排尿などによる余分な水分の排出などが効果的な対処法のひとつです。
ハイビスカスに含まれているクエン酸には、血流を改善させる効果があるため、血液中の余分な水分や老廃物の排出を促すことができます。
また、ハイビスカスには含まれているカリウムは、利尿作用が広く知られている成分です。
ハイビスカスに含まれているクエン酸の血流を改善する作用とカリウムが持つ利尿作用によって、むくみを予防・改善する効果が期待できるといわれています。

[※3:クエン酸回路とは、体内に入った食物を燃焼させエネルギーをつくり出す、一連の流れのことです。]
[※4:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※5:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※4:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○肌荒れでお悩みの方
○血流を改善したい方
○運動時の疲労を回復したい方
○肥満を防ぎたい方
○手足のむくみでお悩みの方

ハイビスカスの研究情報

【1】ハイビスカス種子抽出物は、皮膚繊維芽細胞の増殖因子FGF の活性を維持するはたらきがあり、ハイビスカスは、シワの改善などの皮膚の健康維持に役立つと考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19849726

【2】高血圧ラットにハイビスカスの有効成分A-HRSを6週間摂取させたところ、血圧上昇に関わる成分カテコールアミン及び、アンジオテンシンⅡにはたらきかけ、高血圧予防効果が確認されました。ハイビスカスには血圧降下作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21790490

【3】高脂血症ラットにおいて、ハイビスカス葉を1日あたり200, 300mg/kg 摂取させたところ、HDLコレステロールの濃度は変化することなく、血中脂質濃度を低下させました。この結果より、ハイビスカスには脂質低下効果と高脂血症の予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20089773

【4】薬物によって痛覚、炎症、下痢を引き起こされたマウスにおいて、ハイビスカス花抽出物を投与すると、これら、痛覚・炎症・下痢の抑制効果が確認されました。この結果よりハイビスカスが鎮痛、抗炎症および下痢止め効果を有する可能性を示しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21669166

【5】ハイビスカスにはアントシアニンが含まれており、細胞実験により、脂肪酸燃焼促進物質PPARαを活性化することによる、高コレステロール血症予防、動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19330881

【6】ハイビスカスには機能性成分としてプロトカテキ酸とエスクレチンが含まれており、LDLコレステロールの酸化を抑制することで、高コレステロール血症予防と動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11902968

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参考文献

・日本健康食品・サプリメント情報センター 編 健康食品・サプリメント(成分)のすべて 同文書院

・板倉弘重監修 からだに効くハーブティー図鑑 主婦の友社

・Lee MJ, Chou FP, Tseng TH, Hsieh MH, Lin MC, Wang CJ. 2002 “Hibiscus protocatechuic acid or esculetin can inhibit oxidative LDL induced by either copper ion or nitric oxide donor.” J Agric Food Chem. 2002 Mar 27;50(7):2130-6.

・Rival D, Bonnet S, Sohm B, Perrier E. 2009 “A Hibiscus Abelmoschus seed extract as a protective active ingredient to favour FGF-2 activity in skin.” Int J Cosmet Sci. 2009 Dec;31(6): 419-26.

・Mohan M, Khade B, Shinde A.2012 “Effect of A-HRS on blood pressure and metabolic alterations in fructose-induced hypertensive rats.” Nat Prod Res. 2012;26(6): 570-4.

・Gosain S, Ircchiaya R, Sharma PC, Thareja S, Kalra A, Deep A, Bhardwaj TR. 2010 “Hypolipidemic effect of ethanolic extract from the leaves of Hibiscus sabdariffa L. in hyperlipidemic rats.” Acta Pol Pharm. 2010 Mar-Apr;67(2): 179-84.

・Ali MK, Ashraf A, Biswas NN, Karmakar UK, Afroz S. 2011 “Antinociceptive, anti-inflammatory and antidiarrheal activities of ethanolic calyx extract of Hibiscus sabdariffa Linn. (Malvaceae) in mice.” Zhong Xi Yi Jie He Xue Bao. 2011 Jun;9(6): 626-31.

・Kao ES, Tseng TH, Lee HJ, Chan KC, Wang CJ. 2009 “Anthocyanin extracted from Hibiscus attenuate oxidized LDL-mediated foam cell formation involving regulation of CD36 gene.” Chem Biol Interact. 2009 May 15;179(2-3):212-8.

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