ω(オメガ)-6

omega 6
n6系脂肪酸

ω(オメガ)-6は不飽和脂肪酸のひとつで、食品から摂取する必要のある必須脂肪酸です。コレステロール値を低下させる効果やアレルギー症状を改善させる効果、生活習慣病の予防に効果があります。しかし、脂肪ですので過剰な摂取には注意が必要です。

ω(オメガ)-6とは

●基本情報
ω(オメガ)-6とは、脂肪酸[※1]のうち二重結合した炭素[※2]をもつ不飽和脂肪酸の中で、端から6番目の位置に二重結合をもつものをいいます。ω(オメガ)-6は、人間の体ではつくることができず、食品から摂取する必要がある必須脂肪酸[※3]に指定されています。ω(オメガ)-6には、コレステロール値を低下させるリノール酸[※4]やアレルギー症状を改善させるアラキドン酸が分類されます。また、生活習慣病[※5]の予防に効果があるγリノレン酸も含まれます。

●ω(オメガ)-6の歴史
日本では、昭和40年頃から植物油に含まれるω(オメガ)-6のひとつであるリノール酸が体に良いと広まり、様々な食品に使われ始めました。現在、1日当たりの脂質の摂取量は約60gにもなり、リノール酸の必要量が2gであるのに対し、実際は10~15g摂取しているといわれています。マウスを使った実験では、必要量の数倍のリノール酸を与え続けるとがんやアレルギーを誘発するという結果が出ています。魚介類に多く含まれるω(オメガ)-3とバランスよく摂取することが大切とされています。

●ω(オメガ)-6を含む食品
ω(オメガ)-6は、大豆油、コーン油、ゴマ油といった植物油に多く含まれています。
以前は、「動物性脂肪を植物性脂肪に置き換える」という食事指導がされていましたが、現在の日本人はもともと植物性脂肪を料理に使うことが多く、脂肪はカロリーも多いことから摂り過ぎには注意が必要です。
日本人の食事摂取基準では、1日の目安量は成人男性(30~49歳)が10g、成人女性(30~49歳)が9gとなっています。

●ω(オメガ)-6の性質
ω(オメガ)-6に分類される脂質によって違いがあります。
まず、γリノレン酸については多く摂取しても問題はありません。体の機能をコントロールする役割があり、不足すると高血圧、高血糖の原因になります。
リノール酸は高血圧の予防に効果があり、不足すると成長の遅れ、感染症に感染しやすくなります。しかし、過剰に摂取すると動脈硬化[※6]や免疫力の低下が起こります。
アラキドン酸はアレルギー症状の改善や予防に効果がありますが、一方で過剰摂取によってもアレルギー症状が出てしまう恐れがあります。不足すると免疫力の低下につながります。
ω(オメガ)-6を含めて脂質は人体にとってエネルギー源や血液の材料となりますが、過剰に摂取すると血液の粘度が増して動脈硬化などの原因になるため、摂り過ぎたり少なすぎたりしないバランスに気をつけることが大切です。

[※1:脂肪酸とは、炭素、水素、酸素から成る油脂や蝋(ろう)、脂質などの構成成分です。脂肪酸とグリセリンが結び付いて脂質が構成されます。]
[※2:炭素とは、体内の脂肪酸の主な構成要素のひとつです。脂肪酸は、炭素、水素、酸素から構成されています。]
[※3:必須脂肪酸とは、体内で他の脂肪酸から合成できないために食品から摂取する必要がある脂肪酸のことをいいます。]
[※4:リノール酸とは、人間の体内で合成できない不飽和脂肪酸の一種です。大豆油やコーン油などの植物性の油に多く含まれます。]
[※5:生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。]
[※6:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]

ω(オメガ)-6の効果

●アレルギー症状を緩和する効果
ω(オメガ)-6に含まれるγリノレン酸やアラキドン酸は、血圧[※7]やコレステロール値、血糖値[※8]の低下など人体をコントロールする生理活性物質のプロスタグランジンを生成する材料になります。このプロスタグランジンによって体の機能がコントロールされるため、アレルギー症状の緩和につながります。γリノレン酸は同じくω(オメガ)-6であるリノール酸を体内で変換することでも摂取できます。乳幼児や高齢者、アルコールを多く摂取する方はγリノレン酸の体内生成が十分でないことがあるので食事での摂取が好ましいですが、食品によってはカロリーが高くなってしまうため注意が必要です。【1】

●コレステロール値を下げる効果
ω(オメガ)-6に含まれる成分は、コレステロール値を下げる効果をもっています。しかし、多く摂取してしまうことでリノール酸は善玉(HDL)コレステロール[※9]を減らすことが分かってきました。善玉(HDL)コレステロールは血管内を掃除する役割をもつもので、減少させすぎると血流が悪くなり動脈硬化などの病気につながるため、バランスが大切です。【2】【3】

●生活習慣病の予防・改善効果
ω(オメガ)-6は生活習慣病の予防や改善に効果があります。
ω(オメガ)-6に分類されるγリノレン酸は血栓[※10]を解消し、血流を良くすることで動脈硬化の予防に効果があります。アラキドン酸はコレステロール値の低下や血圧の調整を行うため、高血圧の予防につながります。【2】【3】

[※7:血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す力のことで、血管の壁にかかる圧力のことを指します。]
[※8:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※9:善玉(HDL)コレステロールとは、血管壁に溜まった余分なコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ機能がある物質です。動脈硬化などを防ぐ役割があります。]
[※10:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]

ω(オメガ)-6は食事やサプリメントで摂取できます

ω(オメガ)-6を含む食品

○大豆油
○コーン油
○ゴマ油
○マーガリン
○豚レバー

こんな方におすすめ

○アレルギー症状を緩和したい方
○コレステロール値が気になる方
○生活習慣病を予防したい方

ω(オメガ)-6の研究情報

【1】ω-6の一種であるγ-リノレン酸とDHAをイヌに8日間摂取することで、抗炎症作用が見られました。γ-リノレン酸では、アレルギー関連物質ヒスタミンが放出されるのを緩和する働きが有りました。ω-6はDHAと一緒に取ることで、アトピー性皮膚炎の予防に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15500483

【2】エルシン酸豊富な食事を取ると、コレステロールやトリグリセリドが上昇しますが、12週間に渡ってω-6の一種であるγリノレン酸を豊富に含む月見草を同時に飲用することにより、血清トリグリセリドおよびVLDLコレステロール(中性脂肪を運ぶコレステロールの一種)の増加を抑制し、HDLコレステロールの減少を抑制しました。ω-6は高脂血症予防ならびに生活習慣病予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17938547

【3】マウスを対象に、ω-6の一種であるアラキドン酸を摂取させたところ、マウス腹膜マクロファージにおけるコレステロールの生合成が低下しました。ω-6は高脂血症および動脈硬化予防に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20042190

参考文献

・中屋豊 よくわかる栄養学の基本としくみ 秀和システム

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版社

・吉川敏一、炭田康史 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社

・日経ヘルス編 日経ヘルスサプリメント事典 2008年版 日経BP社

・M.ツィンマーマン 微量栄養素小事典 健康と病気を理解するために 西村書店

・厚生労働省 (2010) “日本人の食事摂取基準”

・Gueck T, Seidel A, Baumann D, Meister A, Fuhrmann H. (2004) “Alterations of mast cell mediator production and release by gamma-linolenic and docosahexaenoic acid.” Vet Dermatol. 2004 Oct;15(5):309-14.

・Dasgupta S, Bhattacharyya DK. (2004) “Dietary effect of gamma-linolenic acid on the lipid profile of rat fed erucic acid rich oil.” J Oleo Sci. 2007;56(11):569-77.

・Rosenblat M, Volkova N, Roqueta-Rivera M, Nakamura MT, Aviram M. (2010) “Increased macrophage cholesterol biosynthesis and decreased cellular paraoxonase 2 (PON2) expression in Delta6-desaturase knockout (6-DS KO) mice: beneficial effects of arachidonic acid.” Atherosclerosis. 2010 Jun;210(2):414-21.

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