persimmon

柿は「柿が色づくと医者が青くなる」といわれるほど栄養価の高い果物です。
ビタミンCをはじめ、カロテンや食物繊維などの健康成分が凝縮されています。
免疫力の向上や美肌効果、腸内環境の改善、二日酔いの予防などに効果があります。

柿とは?

●基本情報
柿とは、カキノキ科カキノキ属に属する果物です。日本古来の植物で、「柿」という字も日本の国字です。
甘柿と渋柿があり、日本の風土に根づいた秋の果物として親しまれています。
甘柿には、受粉に関係なく渋が抜ける「完全甘柿」と、受粉して種子ができると渋が抜ける「不完全甘柿」があります。
渋さを感じる原因は、ポリフェノールの一種で渋み成分でもあるタンニンが口の中で溶けるためです。
​幼果期は甘柿も渋柿も「可溶性タンニン」を含むため渋みを感じますが、甘柿は成長過程で「不溶性タンニン」に変化するため渋みを感じなくなります。
また、干し柿にすると渋みの原因であるこの「タンニン」がほとんど不溶性になるため、渋みが自然に抜けていきます。

<豆知識>柿の簡単な渋抜きの方法
渋抜きの方法としては、40~42℃の湯に12~24時間浸漬する「湯抜き」や、30~40%のアルコールをふりかける「アルコール脱渋」などがあります。ご家庭で行う場合は、数か所小さな穴をあけたビニール袋に渋柿5個とりんご1個を入れて口を閉じるという方法が簡単です。りんごから出るエチレン[※1]の働きにより、1週間ほどで渋が抜けます。

●柿の歴史
柿は日本および中国が原産といわれています。日本には縄文・弥生時代には定着していたようで、「古事記」や「日本書紀」に柿の名前の表記が確認されることから、奈良時代には一般的に食されていたと考えられています。
​平安時代の法典「延喜式(えんぎしき)[※2]」には干し柿がつくられていたとの記録が残されています。

●柿の生産地
甘柿は成熟期である秋の気温が充分に高くないと樹上で渋が抜けないため、東海地方以西の暖地で多く栽培されています。
​主要産地は和歌山県、福岡県、奈良県、岐阜県、愛知県、山形県などです。
渋柿は東北地方から九州まで全国的に栽培されています。また干し柿は、長野県、山梨県などから多く出荷されます。
海外でも東アジア諸国やアメリカの一部、ブラジル、イタリア、イスラエル、ニュージーランドなどで栽培されています。

●柿の旬
品種によって異なりますが、主に9~12月に旬を迎えます。10~11月には最も多くの品種が店頭に並びます。

●柿の品種
大きくは甘柿と渋柿に分かれますが、その土地の気候や風土に合わないと育たないことが多いため、その土地固有の品種が多く誕生しました。現在、柿の品種は1000以上あるとされていますが、中でも以下の5つは特に生産量が多い品種です。

・富有(ふゆう)
市場の半数以上のシェアを占める完全甘柿の代表品種です。岐阜県を生産地とし、1898年に富有と命名されました。
​果皮はオレンジ色で、果実はふっくらと丸みがあります。果肉はやわらかく果汁も豊富で、強い甘みが特徴です。
​10月下旬頃から2月頃にかけて出荷されます。日持ちもよく、主に福岡県や岐阜県などで栽培されています。

・平核無(ひらたねなし)
「種なし柿」としてよく知られている品種で、生食のほか干し柿としてもよく使われます。
​「庄内柿」や「おけさ柿」とも呼ばれている不完全渋柿ですが、出荷時に渋抜きを行うことで甘くなります。
​果汁が多く、甘くまろやかな口当たりが人気の品種で、10月中旬~11月頃に出荷されます。
主に​山形県や和歌山県などで栽培されています。

・刀根早生(とねわせ)
1980年(昭和55年)に登録された渋柿です。平種無の枝変わりで見かけは平種無と変わりません。
​他の柿に比べて出荷が早く9月下旬頃から出荷が始まり、主に和歌山県や奈良県で栽培されています。

・甲州百目(こうしゅうひゃくめ)
​釣り鐘の形をした不完全渋柿で、古くから全国各地で栽培されています。
​渋抜きをして生または干し柿として食べられる以外にも、あんぽ柿[※3]や枯露柿(ころがき)[※4]にも利用されます。
​別名「富士柿」や「蜂屋柿」ともいわれ、主に宮城県や山梨県で栽培されています。​

・松本早生富有(まつもとわせふゆう)
完全甘柿の富有の枝変わり種です。松本早生は、京都の松本豊氏園で発見・育成したことから名付けられました。
​味は富有と似ており甘みが多く、果肉もやわらかめです。熟期は富有より早く、11月上旬に熟します。

●柿に含まれる成分
柿はビタミンCが豊富な果物で、1個にみかんの2倍のビタミンCが含まれており、1日に必要なビタミンCを補うことができます。
​ビタミンCには強い抗酸化作用[※5]があり、紫外線やストレスなどにより発生する活性酸素[※6]を除去し、体の酸化を防ぎます。
​柿に含まれるビタミンCが体内で強い抗酸化作用を発揮して体を酸化から守ることで、病気や老化、肌トラブルを予防します。
さらに、柿はβ-カロテンも豊富で、ビタミンCとの相乗効果でウイルスや細菌に対する抵抗力を強めて粘膜を強化するため、風邪予防や肌荒れ防止に効果的です。

また、干し柿にするとビタミンCは減少しますが、実はカロテンは2倍に増加し、食物繊維も豊富になります。
​1回あたりに食べる量の食物繊維の含有量は、実は全食品中で最も多く優れているとされています。
​ただし、エネルギーが高いため干し柿の食べ過ぎには注意が必要です。
柿に含まれる渋みのもとである「シブオール」と呼ばれるタンニン成分と、「アルコールデヒドロゲナーゼ」と呼ばれる酵素は、アルコールの分解に働きかけるため二日酔いに効果的です。

さらに、柿は葉やヘタの部分にも薬効があり、葉には果実以上にビタミンCが多く含まれています。
​柿の葉で作ったお茶は、​高血圧や動脈硬化予防のほか、潰瘍などによる内出血や痔の出血、鼻血、月経過多、眼底出血にも効果があるといわれています。
​さらに漢方では、ヘタの部分にしゃっくり止めや夜尿症に効果があるとされています。

[※1:エチレンとは、エチレン系炭化水素のうち最も単純な物質で、無色で、かすかに甘いにおいを持つ可燃性気体を指します。植物ホルモンの一種で果実を熟成させたり、落葉を促進させる働きがあります。]
[※2:延喜式とは、平安時代中期に施行された格式のことです。三大格式のひとつであり、ほぼ完全な形で今日に伝えられている唯一の格式といわれ、日本古代史研究に不可欠な文献です。]
[※3:あんぽ柿とは、干し柿の一種で完全に乾燥しきらない半干し状態の柿のことです。中の果肉はしっとりと柔らかく甘みが凝縮されています。]
[※4:枯露柿とは、渋柿の皮をむき天日で干した後、むしろの上で転がして乾燥させた柿のことです。表面に白い粉をふき、強い甘みがあります。]
[※5:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※6:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い抗酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]

柿の効果

柿には抗酸化作用の強いビタミンCをはじめ、カロテン、タンニン、カリウム、さらに干し柿には食物繊維など様々な栄養素が含まれており、美容や健康に対する以下のような効果が期待できます。

●コレステロール値を下げる効果
柿に含まれるポリフェノールの一種タンニンは、血中の悪玉コレステロールを減少させ、血液をきれいにする働きがあります。
血液の悪玉コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭め高血圧を引き起こしやすくなるため、動脈硬化や脳卒中の原因となってしまいます。
タンニンが豊富に含まれる柿には動脈硬化を予防し、高血圧を防いでくれる効果が期待できます。
また、血液の流れがスムーズになると栄養や酸素が体のすみずみまで素早く行き渡り、老廃物が取り除かれます。
​すると、新陳代謝が促進され、体全体が活性化されるため、様々な不調の改善につながります。【1】【4】

●免疫力を高める効果
柿にはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球[※7]に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは、白血球の働きを高め、ビタミンC自らも細菌やウイルスに攻撃を仕掛ける力を持っています。
​また強い抗酸化作用を持つカロテンも豊富に含んでいるため、ビタミンCとの相乗効果で免疫力をさらに高め、風邪などの病気予防に効果的です。【2】

●美肌効果
柿に豊富に含まれるビタミンCには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。
日光に当たり続けると、紫外線の刺激を受けてチロシンと呼ばれるアミノ酸から皮膚の色素細胞であるメラニン色素が生成されます。このメラニン色素が皮膚に沈着することで、シミ・そばかすができます。
ビタミンCは、チロシンからメラニンをつくりだすチロシナーゼという酵素の働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐことで、シミ・そばかすを予防します。【5】【6】

●腸内環境を整える効果
干し柿には非常に多くの食物繊維が含まれており、有害物質の排泄や栄養素の吸収、腸内環境の正常化に働きかけます。
​糖尿病や高脂血症[※8]、便秘解消、生活習慣病予防に効果的です。

●二日酔いを防ぐ効果
柿に含まれる渋みのもとであるシブオールと酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼにはアルコールを分解する働きがあります。
​さらに柿には利尿作用を持つカリウムが多く含まれるため、二日酔いの予防に効果的です。

[※7:好中球とは、体内に存在する白血球の40%~60%を占める白血球の一種です。急性的な炎症に対して中心となって血液中の細菌やウイルスと闘います。]
[※8:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態のことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]

柿は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○生活習慣病を予防したい方
○風邪をひきやすい方
○美肌を目指したい方
○血圧が高い方
○便秘でお悩みの方
○お酒をよく飲む方

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柿の研究情報

【1】Ⅱ型糖尿病マウスに、柿タンニンを体重の1% の量で8週間摂取させたところ、胆汁酸分泌が促進され、血中コレステロール、トリグリセリドの上昇が抑制された他、インスリンの状態を改善され、脂肪肝が抑制されました。
柿タンニンが肝臓の褐色脂肪細胞や骨格筋に働きかけ、コレステロール代謝酵素を活性化することで、高脂血症予防効果ならびに肝臓保護効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22079182

【2】ヒトの白血球細胞に、柿葉エキスを0~100μg/ml を投与すると、72時間後には、白血球細胞への分化が促進されたことから、柿葉が白血病の予防に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19956868

【3】柿葉フラボノイドは、リンパ球と神経節・ニューロンとの接着を抑制するはたらきを持つことから、柿が抗炎症作用ならびに神経変性疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19771850

【4】高脂肪食摂取マウスに、柿の実5% 含有する餌を摂取させたところ、糞便中の胆汁酸分泌が促進され、肝臓の脂質および血中コレステロール濃度が減少しました。柿は胆汁酸の主要成分であるコール酸と結合することにより、胆汁排出促進作用を持つため、柿に高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19585467

【5】柿皮の成分である2-メトキシ-4-ビニルフェノールには、高い抗酸化力を持つとともに、メラニン合成に関わる酵素チロシナーゼ阻害作用を持つことから、柿に美白効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19282644

【6】柿葉に含まれるフラボノイドは、皮膚の弾力やハリに関与する酵素、コラゲナーゼやエラスターゼ阻害作用を持つため、柿にシワやキメなど肌の健康維持効果が期待がされています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16029677

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参考文献

・野間佐和子 旬の食材 四季の果物 講談社

・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・Matsumoto K, Yokoyama S. 2012 “Induction of uncoupling protein-1 and -3 in brown adipose tissue by kaki-tannin in type 2 diabetic NSY/Hos mice.” AFood Chem Toxicol. 2012 Feb;50(2):184-90.

・Kim SH, Cho SS, Simkhada JR, Park SJ, Lee HJ, Kim TS, Yoo JC. 2010 “Effects and action mechanism of Diospyros kaki on the differentiation of human leukemia HL-60 cells.” Oncol Rep. 2010 Jan;23(1):89-95.

・DBei WJ, Xu AL, Li CY, Cabot PJ, Hermanussen S. 2009 “Flavonoids from Diospyros kaki inhibit the adhesion between lymphocyte and dorsal root ganglion.” Zhong Yao Cai. 2009 May;32(5):740-4.

・Matsumoto K, Yokoyama S, Gato N. 2010 “Bile acid-binding activity of young persimmon (Diospyros kaki) fruit and its hypolipidemic effect in mice.” Phytother Res. 2010 Feb;24(2):205-10.

・Fukai S, Tanimoto S, Maeda A, Fukuda H, Okada Y, Nomura M. 2009 “Pharmacological activity of compounds extracted from persimmon peel (Diospyros kaki THUNB.).” J Oleo Sci. 2009;58(4):213-9.

・An BJ, Kwak JH, Park JM, Lee JY, Park TS, Lee JT, Son JH, Jo C, Byun MW. 2005 “Inhibition of enzyme activities and the antiwrinkle effect of polyphenol isolated from the persimmon leaf (Diospyros kaki folium) on human skin.” Dermatol Surg. 2005 Jul;31(7 Pt 2):848-54

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