松の実

pine nut

中国では、仙人が食べるものとされていた食材です。ビタミン類、たんぱく質などの栄養が豊富に含まれている食材で滋養強壮作用として利用されています。特に薬膳料理として家庭の食材に取り入れられ、病気予防にも利用されています。

松の実とは

●基本情報
マツ科マツ属の大木であるマツの木の実です。一般的には、「松ぼっくり」と呼ばれているものの中にある種子の胚乳の部分のことをいいます。この種子は、たんぱく質と不飽和脂肪酸を含んでおり、鉄、亜鉛、銅、マンガンなどのミネラル類やビタミンB群を始め、ビタミンEや葉酸などビタミン類も豊富です。
栄養が豊富であることから滋養強壮作用が期待されおり、虚弱体質の人にも昔から役立てられてきました。食材としては、薬膳料理[※1]やイタリア料理、お菓子づくりなどのスパイスとして加えられ、様々な料理に幅広く利用されています。また、松の実の歴史は聖書にも記述される程に栽培の歴史が長く、中国では仙人の霊薬として生薬や薬膳料理として使われてきました。

●松の実の歴史
松の実は世界中で約20種類存在します。人類が食用として利用する大型種子はリス、カラス、ネズミなどが食べ残したものが親木から遠く離れた所で発芽する種子散布様式で育ったものが大半です。世界各地で食材として利用され、ヨーロッパでは、「ナッツ・パイン」「ストーン・パイン」、中国の「長生果」、朝鮮半島と日本での「朝鮮五葉」、メキシコの「インディアンナッツ」、そしてアメリカの「アロカビアン」などがあります。しかし松の実は、受粉栽培することが難しく、高価な食材とされています。中国の古い薬学書では松の実を「長生果」とし、松の実を仙人の霊薬や不老長寿の薬として、また滋養強壮の薬用として利用されていました。他にも、ヨーロッパやイタリア料理では、松の実を取り出し、煎ったり、揚げたりして加熱して料理に加えて食するものです。

●松の実の利用法
松の実は生食できない食材なので、香ばしく炒ってサラダや詰め物などに利用したり、おかゆやおしるこに入れたりとヘルシー料理として加えるのがおすすめです。

●松の実に含まれる成分と性質
松の実には、脂肪、たんぱく質、ミネラル、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、食物繊維の成分が豊富に含まれております。脂肪は不胞和脂肪酸ですので、動脈硬化を予防する働きの抗コレステロール作用があります。生活習慣病を予防してドロドロ血の改善や体を動かすエネルギーを作ってくれます。ビタミンB群の栄養素は、体内での代謝を促進させる補酵素としての働きがあるので、働きをパワーアップさせることが出来ます。

<豆知識>カフェインとの相性
コーヒーなどのカフェインが含まれる飲料はビタミンCやビタミンBを消費してしまうので、一緒に摂取することはなるべく控えるべきです。

[※1:薬膳料理とは、健康保持のための食事として、中国の医食同源(薬食同源)の考えから生まれた漢方薬の材料を使った中国料理のことです。]

松の実の効果

●美肌効果
ビタミンは、美肌をつくるのに必要不可欠な成分でもあります。肌の新陳代謝は通常28日周期で行われます。その肌のサイクルが年齢によって不規則になることで、トラブルが発生してしまいます。ビタミンには肌を丈夫にするビタミンAが大切とされ、ビタミンB群は肌の炎症などのトラブルを防いで正常な状態を保つのに重要なビタミンとなります。また、ビタミンEは血行をよくするので、新陳代謝を高めて肌の発色を良くなるように促します。

●眼精疲労を改善する効果
ビタミンB群ビタミンCビタミンEなどが目の疲れ、ドライアイ、目の老化防止に効果があります。ビタミンB群は体の疲労を緩和し正常な状態へ回復するビタミンとして活躍します。しかし不足してしまうと、疲れ目だけでなく、目の調節力が弱まってしまい、しょぼしょぼしたり、かすんだり、明るい場所のでは見えにくいという症状が出てきたりします。ビタミンEは、活性酸素から細胞膜を守る働きをします。不純和脂肪酸が酸化されてしまうと目の老化につながるので、ビタミンEはしっかり補う必要があります。ビタミンCは目の形を保っている水晶体の老化を防いでくれます。白内障や緑内障の予防にも良いとされています。

●生活習慣病の予防・改善効果
松の実の脂肪には抗コレステロール作用のある不飽和脂肪酸が含まれており、ドロドロ血を予防してくれます。また、脂肪は体を動かすエネルギーとなり、たんぱく質は健康な体をつくるもととなって生活習慣病を予防します。
【1】【2】【3】

他にも松の実は、様々な栄養をバランスよく含んでいるため、高齢者や栄養不足の方の滋養食としても利用されています。

松の実はこんな方におすすめ

○美肌を目指している方
○眼精疲労でお困りの方
○生活習慣病を予防したい方

松の実の研究情報

【1】高脂肪食摂取マウスを対象に、松の実抽出物を12週間摂取させたところ、体重増加ならびに脂肪蓄積が緩和され、脂質代謝酵素AMPKが活性化されました。このことから、松の実は抗肥満作用ならびに高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23140571

【2】閉経後肥満女性18名を対象に、松の実を1日あたり3g の量で摂取させたところ、食欲を司る消化関連酵素コレシストキニンの分泌が増加し、食欲が減少したことから、松の実は食欲減退およびダイエットに有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18355411

【3】高血圧患者を対象に、松の実抽出物を1日あたり17.5g の量で摂取させたところ、血圧の低下ならび血中脂質も正常化したことから、松の実は高血圧ならびに高脂血症予防効果が期待されています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16739609

参考文献

・永川祐三 著 最新版 病気を治す栄養成分Book 主婦と生活社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・Le NH, Shin S, Tu TH, Kim CS, Kang JH, Tsuyoshi G, Teruo K, Han SN, Yu R. (2012) “Diet enriched with korean pine nut oil improves mitochondrial oxidative metabolism in skeletal muscle and brown adipose tissue in diet-induced obesity.” J Agric Food Chem. 2012 Dec 5;60(48):11935-41.

・Pasman WJ, Heimerikx J, Rubingh CM, van den Berg R, O’Shea M, Gambelli L, Hendriks HF, Einerhand AW, Scott C, Keizer HG, Mennen LI. (2008) “The effect of Korean pine nut oil on in vitro CCK release, on appetite sensations and on gut hormones in post-menopausal overweight women.” Lipids Health Dis. 2008 Mar 20;7:10

・Bakhtin IuV, Budaeva VV, Vereshchagin AL, Egorova EIu, Zhukova EIu, Saratikov AS. (2006) “Efficiency of Siberian pine oil in complex treating of people ill with benign hypertension.” Vopr Pitan. 2006;75(1):51-3.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ