ソレルとは?
●基本情報
ソレルとは、ヨーロッパやアジアを原産地とするタデ科ギシギシ属多年草のハーブの一種です。
ソレルは寒さに強く丈夫であるため栽培する場所を選ばず、どこでも育ちます。料理や薬草として利用される若葉は春から初夏にかけて収穫でき、ソレルの独特の酸味は夏にかけてだんだんと強くなっていきます。ソレルの葉は緑色の長楕円形をしており、茎は赤紫色を帯びています。成長すると40~80cm程になり、初夏から淡緑色の小さな花を咲かせます。一般的に食用として利用されるのはガーデンソレルで、主に生の葉がサラダなどに使われます。また、改良種としてジューシーで味もやわらかいラウンド・リーブド・ソレルがあり、フランス料理ではソースや煮込み料理に多く用いられます。
●歴史
ソレルは、古代からヨーロッパでは薬草として親しまれてきました。その後日本にも運ばれ、現在は帰化植物[※1]として田んぼのあぜ道などに自生しています。日本ではスイバとも呼ばれており、このスイバとは漢字にすると「酸い葉」と書き、レモンのように酸味がとても強いことから名づけられました。
●ソレルに含まれる成分と性質
ソレルの葉や茎にはシュウ酸[※2]が含まれているため強い酸味があります。また、抗酸化力 [※3]が非常に強く、老化の原因である活性酸素 [※4]を抑制する働きのあるビタミンCや、体内の組織や血管を縮める収れん作用があるタンニンも含まれています。
●ソレルの利用
・薬用
ソレルは古くからヨーロッパでは薬草として利用されてきました。特に、胃や肝臓などの内臓に働きかけ、内臓がもともともつ働きを助けるといれています。また、根はすりつぶして水虫やタムシなどの外用薬にしたり、煎じ汁を強壮薬や下痢止めに利用したりします。
・食用
ソレルは食用として料理にもたくさん活用されています。ソレルの若葉は独特の酸味と鮮やかな緑色を活かしてスープやグリーンソース、サラダなど、風味づけとして使われています。特にフランスでは広く用いられており、フランス料理では定番のハーブとなっています。また、葉を茹でて和えたり、ソレルの酸味が肉を柔らかくする働きがあることから鶏や鴨に詰め物としても食されています。ソレルにはシュウ酸が多く含まれるため、食用として利用する際は茹でてから使い、さびを防ぐため鉄製の鍋は避けたほうが賢明です。
・掃除
ソレルがもつ酸性の性質を利用して、銀製品のさびを取ったり、枝編み細工の汚れを取るために使用されることもあります。
●ソレルを摂取する際の注意点
ソレルにはシュウ酸が豊富に含まれています。シュウ酸は、多量に摂取すると尿道結石の原因になるともいわれているため食べすぎには注意が必要です。また、リウマチや関節炎、痛風[※5]などの症状がある人も摂取する際は量を控えたほうがいいでしょう。小さなお子様や高齢の方も注意が必要です。
また、シュウ酸を多く含む食材を食べるときは、煮たり茹でたりすることで可溶性シュウ酸が煮汁に出るため、シュウ酸の量を約2分の1に減らすことができます。
[※1:帰化植物とは、植物が自生地から他の地域に移り、野生化して繁殖するようになったもののことです。]
[※2:シュウ酸とは、ほうれん草などの青菜に多く含まれるエグ味成分のことです。]
[※3:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※5:痛風とは、飲酒や過労、ストレスなどによって体内で核酸の代謝産物である尿酸が溜まり、高尿酸血症が引き起こされることによって発症する病気です。足や手の関節が腫れて、激しい痛みを伴います。]
ソレルの効果
●美肌効果
ソレルに豊富に含まれるビタミンCには肌荒れの緩和や美白などの美容効果あります。シミやそばかすは、アミノ酸の一つであるチロシンが、メラニンという黒い色素に変わり肌に沈着することによって起こります。ビタミンCにはチロシンをメラニンに変える酵素チロシナーゼの働きを阻害する働きがあることから、メラニン色素の沈着を防ぎ、美白効果が期待できます。また、ビタミンCはコラーゲンの合成を助けることから肌のしわの予防に効果があります。さらにソレルに含まれるタンニンには収れん作用があることから、毛穴や皮脂腺を引き締める働きがあります。
その他にも、古くからソレルの根をすりおろしたり、葉を絞った汁を白斑やはたけなどの皮膚病の薬としても使用されてきました。
●免疫力を高める効果
ソレルにはビタミンCが豊富に含まれることから、免疫力を高める効果があります。ビタミンCは、体内に侵入した病原菌を攻撃する白血球[※6]の働きを強化し、さらにビタミンC自身も病原菌を攻撃することで免疫力を高めます。また、ビタミンCは抗ウイルス作用を持つインターフェロンの生成を促す働きがあります。
これらの働きによりビタミンCを積極的に摂取することで風邪を早く治すだけでなく、風邪を引きにくい身体づくりにも効果を発揮します。さらに、ビタミンCには強い抗酸化力があることから、ガンをはじめとする様々病気の原因となる活性酸素を抑制する働きがあります。【1】【3】
●下痢を改善する効果
ソレルに含まれるタンニンには、下痢を改善する効果があります。ソレルの根を煎じたものは、下痢止め薬として使用されてきました。これはソレルに含まれるタンニンが、体内に入ると腸の粘膜を刺激することで腸を引き締めるという、収れん作用によるものです。また、利尿効果も期待できるといわれています。
[※6:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
こんな方におすすめ
○美肌を目指したい方
○肌荒れでお悩みの方
○免疫力を向上させたい方
○下痢になりやすい方
ソレルの研究情報
【1】ソレルに含まれるプロシアニジンのインフルエンザウィルスに対する効果を確認するために、MTTアッセイを使いその効果について確認したところPR8(H1N1)に対するIC50は2.5μg/mL、IAV(H1N1)pdm09に対するIC50は2.2μg/mLとなりました。この作用メカニズムとしてはインフルエンザウィルスの侵入をブロックする機構が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25303676
【2】ソレルの湯抽出物には胃炎や胃の腫瘍に対する効果があるとされています。本論文ではマウスモデルを使い、ソレルの抽出物の効果の確認を行ったところ胃の腫瘍の減少が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24009831
【3】ポリフェノールを多く含んだソレルの抽出物を使い、単純ヘルペスウィルスに対する効果の確認を行いました。結果、IC50は0.8μg/mLとなりました。また、ヒトの肌モデルに対しても抽出物を与えることで、単純ヘルペスウィルスの広がりを減らす結果となりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21070811
参考文献
・ハーブスパイス館 田部井満男 小学館
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・Derksen A, Hensel A, Hafezi W, Herrmann F, Schmidt TJ, Ehrhardt C, Ludwig S, Kühn J. (2014) “3-O-galloylated procyanidins from Rumex acetosa L. inhibit the attachment of influenza A virus.” PLoS One. 2014 Oct 10;9(10):e110089.
・Gescher K, Hensel A, Hafezi W, Derksen A, Kühn J. (2011) “Oligomeric proanthocyanidins from Rumex acetosa L. inhibit the attachment of herpes simplex virus type-1.” Antiviral Res. 2011 Jan;89(1):9-18.
・わかさの秘密「タンニン」
/seibun/tannic-acid/
・わかさの秘密「ビタミンC」
/seibun/vitamin-c/