バナジウム

vanadium
メタバナジン酸 オルトバナジン酸 バナジウム塩酸 五酸化バナジウム 硫酸バナジル

バナジウムは、牛乳やそばに含まれる超微量元素で、ミネラルの一種です。
脂質やコレステロールの代謝にはたらくと考えられており、最近ではインスリンの効果を増大し、糖尿病の血糖値を下げる働きがあるともいわれています。
超微量でも、人体には必須のミネラルとされています。

バナジウムとは

●基本情報
バナジウムは地中や海水中、食べ物では牛乳やそばに多く含まれる超微量元素で、ミネラルのひとつです。鉱石としてのバナジウムの主な生産国は、中国や南アフリカが挙げられます。バナジウムは様々な科学形態を取り、メタバナジン塩酸、オルトバナジン酸、バナジウム塩酸などが存在しています。血糖値を下げる効果から、医薬品として使われることもあります。
人は毎日の食事からバナジウムを平均6〜18μg摂取しています。しかし、インスリンの量の抑制を期待するには80μgのバナジウムが必要なので、食品やミネラルウォーター、サプリメントで摂取することがおすすめです。

●バナジウムの歴史
バナジウムが発見されたのは18世紀、メキシコのシマパン鉱山で褐鉛鉱[※1]が発見されたのがきっかけです。1830年、スウェーデンの科学者、ニルス・ガブリエル・セフストレーヌ氏が軟鉄の中から発見され、色の変化が美しいことからスカンジナビア神話の女神、「バナジス」に由来します。

●バナジウムを多く含む食品
バナジウムは、牛乳やそば、えび、マッシュルーム、いわし、わかめ、卵などに多く含まれています。また、富士山麓のごく限られた地域からは、バナジウムを豊富に含んだ水をとることができます。雪解け水や雨水が、富士山麓のバサルト層を数十年の歳月をかけてろ過されることによって、バナジウムを含んだ伏流水となるのです。

●バナジウムの安全性
バナジウムは1日当たり、1.8mg以下の摂取なら、安全だといわれています。しかし、長期にわたる過剰な摂取は安全ではありません。肝障害などの深刻な副作用のリスクがあります。
また、血糖値を低下させる可能性があるため、血糖値をこまめに測定するなどの注意も必要です。

<豆知識①>バナジウムを含んだ食材の調理法
バナジウムは加熱しても、成分が変化することはありません。なので、バナジウムが含まれた食材を加熱したり、バナジウム入りのミネラルウォーターをコーヒーにして摂取しても、何ら問題はありません。

[※1:褐鉛鉱とは、バナディン(バナディン)鉛鉱とも呼ばる鉱物のことで、主成分はバナジウムです。]

バナジウムの効果

●血糖値を下げる効果
最近の研究で、バナジウムが糖尿病の治療に有効ではないかといわれています。研究が進められているのは、インスリン依存型の糖尿病です。バナジウムにはインスリンと呼ばれる血糖値を下げるホルモンに似た働き、またインスリンの効きを良くする効果があり、血糖値を正常に戻します。【1】【3】

●動脈硬化を予防する効果
バナジウムは、脂質の代謝を促進し、コレステロールの合成を抑制する作用が認められています。バナジウムが不足してしまうと、コレステロールの動きや脂質の代謝が悪くなり、血管にコレステロールが蓄積されやすくなり、動脈硬化になる危険性が高まります。【2】

●むくみを予防・改善する効果
むくみの原因となるのは、ドロドロの血液です。バナジウムを摂取し、血糖値を低下させることでサラサラの血液へと改善し、全身の血流を良くします。

バナジウムは食事やサプリメントで摂取できます

バナジウムを多く含む食材

○牛乳
○そば
○豆腐
○エビ
○イワシ
○ワカメ
○豆腐

こんな方におすすめ

○糖尿病の治療をされている方
○動脈硬化を防ぎたい方
○顔や身体のむくみが気になる方

バナジウムの研究情報

【1】非インスリン依存性糖尿病患者8名にプラセボまたは硫酸バナジウムを1日あたり100mg の量で4週間与えたところ、バナジウム摂取群では血中グルコース濃度が20%減少しました。バナジウムは糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8781301

【2】モルモットを対象に、酸化バナジウムを投与したところ、血管の動脈硬化が緩和されたことから、バナジウムは血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8621019

【3】非インスリン依存性糖尿病患者にプラセボまたは硫酸バナジウム(100mg/日)を3週間摂取させたところインスリン感受性が改善し、血糖値が低下しました。バナジウムは糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8621019

参考文献

・則岡貴子著 ひと目でわかる あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房新社

・中村丁次監修 からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日本医師会 健康食品・サプリメント(成分)のすべて―ナチュラルメディシン・データベース
日本健康食品サプリメント情報センター

・日経ヘルス編集 サプリメント事典 第4版 日経BP社

・「健康食品」の素材情報データベース

・バナジウム資源の供給ポテンシャルについて

・健康美容EXP
http://dictionary.e-expo.net/health/health007/post-115.html

・Boden G, Chen X, Ruiz J, van Rossum GD, Turco S. (1996) “Effects of vanadyl sulfate on carbohydrate and lipid metabolism in patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus.” Metabolism. 1996 Sep;45(9):1130-5.

・Ivanov VN. (1975) “Effect of vanadium on tissue respiration in organs and on cholesterol metabolism in guinea pigs with experimental atheroclerosis.” Cor Vasa. 1975;17(1):75-80.

・Halberstam M, Cohen N, Shlimovich P, Rossetti L, Shamoon H. (1996) “Oral vanadyl sulfate improves insulin sensitivity in NIDDM but not in obese nondiabetic subjects.” Diabetes. 1996 May;45(5):659-66.

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